ドイツのペーター・アルトマイヤー経済相(CDU:ドイツキリスト教民主同盟)の広報担当者はこのほど、対外経済法(AWG)の改正に向けて他の省と調整していると明らかにした。欧州連合(EU)域外からの国外投資家によるドイツ企業への出資の審査を厳格化する方針。
現行のAWGでは、国外投資家によるドイツ企業への出資比率が25%を超えなければ、政府は介入できない状況にある。連邦経済省はAWGの改正により、同比率を15%に引き下げ、EU域外の国外投資家がドイツ企業に出資する際、政府による差し止めを可能にする方針。なお、メディア報道によると、政府が介入できるのは、エネルギー網の運営会社や航空機の運航会社や飲料水を管理するためのソフトウエアのメーカーなど「敏感な経済分野」に限定される見通し。
ドイツでは先ごろ、中国の国有送電会社、国家電網(SGCC)がドイツの送電会社50ヘルツの資本の20%を取得しようと試みたが、政策金融機関のドイツ復興金融公庫(KfW)が50ヘルツの資本の20%を取得する形でSGCCの資本参加を阻止した。また、中国の煙台市台海集団によるドイツの工作機械メーカー、ライフェルト・メタル・スピニングの買収計画に対しては、ドイツ政府が買収に拒否権を行使するなど、中国企業の買収活動に対するドイツ政府の対応は厳しくなっている。
■独業界団体からは批判も
ドイツ政府が対外経済法(AWG)を改正し、欧州連合(EU)域外からの国外投資家によるドイツ企業への出資の審査を厳格化する方針であることに対し、ドイツの業界団体からは、対応に理解を示しつつも、「行き過ぎた心配」を指摘する声が上がっている。
独卸売・貿易業者連盟(BGA)のホルガー・ビングマン会長は『ウェルト』紙に対し、このような政府の対応について、「これまでの同様なケースの経験では、ドイツが頼りにしている国外投資家に対して心配しすぎる理由はない」と述べるとともに、「原則として売却権は所有者にあるべきだ」との見解を示した。
独商工会議所連合会(DIHK)のマーティン・ヴァンスレーベン専務理事も、企業買収により公共の安全と秩序が脅かされる恐れがないかを審査する政府の対応に理解を示しつつも、「ドイツ企業、特に中堅企業は、原則として資本の売却を自由に決定できるべきだ。厳格化は国外投資家をひるませる恐れがあり、同時に、他国が障壁を強化する可能性がある」と指摘する。
また、独産業連盟(BDI)のヨアヒム・ラング専務理事はドイツ産業にとっての国外資本の重要性を強調し、「ドイツでは約300万人の被雇用者が外資系企業に勤務している」と述べ、「審査対象となる出資比率の引き下げは、敏感な安全保障上の重要な分野に限定すべきだ」との考えを示した。