欧州連合(EU)と英国は8月31日、英国のEU離脱をめぐる首席交渉官会合をブリュッセルで開いた。EUのバルニエ首席交渉官によると、英国が離脱した後の安全保障での連携などの協議が進展し、交渉期限となっている10月までの合意に望みをつないだ。ただ、最大の焦点となっている北アイルランドとEU加盟国アイルランドの国境問題に関しては、なお調整が必要で、期限内に合意できるかどうか不透明な情勢だ。
EUと英国は昨年12月、北アイルランドとアイルランドの国境問題について、英国がEUを離脱してからも人やモノの流れを制限しないようにするため、厳しい国境管理を避けることで合意済み。しかし、それをどのような形で実現するかは決まっていない。EU側は具体策として、国境問題の現実的な解決策が見つからない場合は、北アイルランドをEUが設ける「共通規制地域」に組み込み、EUの関税同盟に事実上とどめるという案を提示している。
これに対して、アイルランドと英本土の間に事実上の国境が引かれるとして反発する英国は、2019年3月末にEUを離脱した直後に双方の関係が激変し、貿易などに大きな影響が及ぶのを避けるため設定される「移行期間」が終了する2020年12月末までに国境問題を解決できない場合は、北アイルランドだけでなく英国全体が21年12月末まで関税同盟にとどまることを提案。双方の主張に大きな隔たりがある。
英国は2019年3月にEUを離脱することになっている。離脱交渉の結果は欧州議会などの承認を得なければならず、その手続きに時間がかかることから、10月18、19日に開かれるEU首脳会議までに合意する必要がある。バルニエ首席交渉官と英国のラーブEU離脱担当相が行った今回の協議では、安全保障の協力や犯罪者引渡しなど司法協力で進展があり、バルニエ首席交渉官は10月までの合意が可能との見解を示した。
ただ、今回は国境問題に関する突っ込んだ話し合いは行われず、決着を今後の協議に持ち越した。また、EUの農産物などの原産地表示制度の今後の扱いをめぐっても溝が埋まっておらず、バルニエ首席交渉官は早急に解決策を探る必要があると述べた。