VWの中国市場依存度の高さに警告=独CAM所長

ドイツの自動車・モビリティ研究機関、センター・オブ・オートモーティブ・マネージメント(CAM)のステファン・ブラッツェル所長はこのほど、独自動車専門誌『オートモビル・プロダクション』(電子版、11月9日付)に掲載されたインタビュー記事の中で、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の中国市場への依存度がきわめて高いことに言及し、事業リスクが高いと警告した。また、中国における電動車の普及にともない、ドイツの自動車大手の現地生産規模がさらに拡大する可能性を指摘した。

ブラッツェル所長によると、VWグループは中国における販売台数が同社の世界販売の40%を占めている。同所長は、VWの中国市場における強さがVWの近年の成功要素になっていると述べる一方、何らかの問題が発生した場合には、その強みが比較的早く弱点に変わりうるとして、事業リスクが高いと警告している。中国市場の代わりとして、北米市場を強化すべきであるとの見解も示した。なお、独自動車大手のBMWとダイムラーは中国販売が全体の20~25%にとどまっており、比較的影響は小さいと説明した。

■ 電動車の普及で中国の現地生産が拡大も

ブラッツェル所長はこのほか、販売市場に生産拠点を設ける傾向がこの10~15年で浸透してきたことに言及し、中国が世界の電動車市場をけん引する見通しであることや、世界の自動車メーカーが中国で現地のバッテリーセルメーカーと協力しなければならないことから、ドイツの自動車メーカーの中国生産が今後さらに増える可能性があると指摘している。また、ドイツの高級車メーカーは中国市場への輸出率が比較的高いが、電動車に関しては、現地生産が増える可能性があり、これを受けて、ドイツにおける自動車生産が現在と比べてマイナスの影響を受ける可能性があると指摘した。

■ 中国の電気自動車メーカー、新興企業の将来性は未知数

ブラッツェル所長はさらに、電動車市場で今後の成長が予想される中国の自動車メーカーとして、吉利(Geely)、比亜迪汽車(BYD)、北京汽車(BAIC)の3社を挙げた。ただ、吉利に関しては、スウェーデン自動車大手のボルボ・カーズの買収を通してすでに世界市場で事業展開している、とコメントした。

新興企業に関しては、上海蔚来汽車(NIO)とバイトン(Byton)が高い技術力を持つが、商用生産に成功するかはまだ分からない、との見通しを示した。ただ、いずれにしても電動車の普及により、新興企業がグローバルプレーヤーとして台頭し、既存の大手メーカーから市場シェアを奪う可能性はある、との見解を示している。

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