英政府は第5世代(5G)移動通信ネットワークの構築にあたり、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の参入を限定的に容認する方針を固めたもようだ。現地メディアが4月24日、政府関係者などの話として一斉に報じた。英国ではボーダフォンなど複数の主要携帯電話会社がすでに4Gサービスで同社製品を採用しており、5Gで同社を完全に排除した場合に生じる事業者のコスト負担やネットワーク整備の遅れに配慮したとみられる。ただ、米国は安全保障上の懸念から各国政府にファーウェイの排除を求めており、新たな火種になりかねない。
ロイター通信などによると、メイ首相が議長を務める国家安全保障会議(NSC)が4月23日の会合でファーウェイの扱いについて協議し、5Gインフラの中核部分から同社製品を排除する一方、アンテナなど非中核部分については参入を認める方針を決めた。ただ、ハント外相やウィリアムソン国防相など、少なくとも5人の閣僚が同社の参入に懸念を示したとされる。
今回の動きについて英政府からの発表はないが、ハモンド財務相は「競争環境を維持しながら、いかなる環境にも耐える安全なネットワークを構築する必要があり、適正なバランスを取ることが極めて重要だ」と述べた。一方、ファーウェイは報道を受け「英国の企業と消費者は当社の先進的な技術を通じ、高速で信頼性の高いネットワークサービスを利用できる」とコメントした。
こうした中、米国家安全保障局(NSA)のロブ・ジョイス上級顧問(サイバーセキュリティ戦略担当)は4月24日、機密情報を共有する「ファイブアイズ」を構成する英語圏5カ国(米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)は、「最も高度な機密性」を要する通信ネットワークにファーウェイの技術を採用しないとの見解を示した。スコットランドで開かれたファイブアイズの会合後に発言した。ジョイス氏は英政府がファーウェイの参入を限定的に認める方針との報道について、「英国の決定によって同盟国の安全保障が脅かされることがあってはならない。英国もそのことは理解している」と述べ、英側をけん制した。
これに対し、英国家サイバーセキュリティ・センター(NCSC)のシアラン・マーティン所長は「ファーウェイをめぐる見解の相違が5カ国による機密情報の共有を脅かすことはない」と強調。一方、英下院外交委員会のトム・トゥーゲントハット委員長は「英国にとって最重要の安全保障同盟はファイブアイズだ」と指摘。5Gインフラのうちどこまでを「非中核」と定義するかは極めて難しいため、ファーウェイの参入を認めるべきではないとの考えを示した。