独高級スポーツカーメーカーのポルシェは、小規模の量産モデルである新型「718ケイマンGT4クラブスポーツ」の車体部品に天然繊維複合材料を使用している。この天然繊維複合材料は、フラウンホーファー・ヴィルヘルム・クラウディッツ木材研究所(WKI)とハノーバー専門大学のバイオプラスチック・バイオ複合材料研究所(IfBB)が共同開発した。
自動車の軽量化に寄与する材料としては、軽量鋼と炭素繊維複合材が注目されているが、これらの材料は、加工や修理、リサイクルが技術的に難しいほか、製造に大きなエネルギーを必要とするなどの難点がある。
これらの問題の解決策として、フラウンホーファー・ヴィルヘルム・クラウディッツ木材研究所(WKI)では、炭素繊維の代替材料として天然繊維を使用した強化プラスチックの開発に注目した。フラウンホーファーWKIによると、天然繊維の使用により、産業用複合材料の加工、使用、廃棄における環境負荷が改善されるほか、天然の亜麻、麻、木材、ジュート繊維は炭素繊維よりも安価で、製造に必要なエネルギーが少ない利点がある。
WKIとIfBBが共同開発した材料は、ポルシェの実験施設での試験を経て、2015年からポルシェの「バイオコンセプトカー」に搭載し、試験・改良を重ねてきた。これらの経験を踏まえて、量産モデルの新型「718ケイマンGT4クラブスポーツ」では、運転席と助手席のドア、リアウィングに天然繊維複合材料を使用した。天然繊維複合材料を使用したドアでは、鋼鉄製に比べ最大60%の軽量化を実現した。
この開発プロジェクトはドイツ連邦食糧農業省(BMEL)が再生可能資源協会(FNR)を通して支援している。