長距離のガス供給網を運営する事業者が参加するドイツの業界団体FNB
Gasが1月28日、ドイツ全域を対象とする水素の輸送インフラ・ネットワークの構想マップを発表した。水素生成の主要拠点と産業利用、モビリティ(移動)、熱利用、地下貯蔵など水素の需要が高い地域を結ぶネットワークの構築を想定したマップで、全長は約5,900キロメートルに達する。このうち90%以上は既存の天然ガス網を活用しており、継続的に拡張することができるとしている。
FNB
Gasは今回の構想の発表により、ドイツの水素経済にとって経済的に効率的な水素インフラの構築に向けて一石を投じる狙いがあった、と説明している。
また、FNB
Gasのラルフ・バーケ会長は今回の構想マップの発表に際し、「既存のガスインフラの活用のほかにも水素利用に関する技術やネットワーク構築に関するソリューションに取り組んでいる」とコメントした。また、気候目標を達成するためには、水素の輸送インフラだけでなく、再生可能エネルギー由来の電力を分解して水素を生成する電解槽(エレクトロライザー)の市場形成、再生可能な脱炭素ガスの需要を喚起するためのインセンティブなどが必要となるとも指摘している。
独経済紙『ハンデルスブラット』によると、天然ガスの供給網の多くは複数のパイプラインが並走している構造のため、一部を天然ガス以外にも使用することができる。また、専門家の多くは、天然ガスは工業や熱分野の発電において2030年代に入っても重要な役割を担うと予想しているものの、長期的な視野では、気候保護を背景に天然ガスの重要性は失われ、代わりに水素の重要性が高まっていくと予想している。