英政府は6月22日、環太平洋経済連携協定(TPP)加盟に向けた交渉を開始した。トラス国際貿易相とTPP議長国を務める日本の西村康稔経済再生相がオンライン形式で会談。近く作業部会を立ち上げ、物品貿易やサービス貿易、政府調達、規制面の協力など幅広い分野について加盟11カ国との協議に入ることを確認した。
2020年末に欧州連合(EU)を完全離脱した英国は独自の通商政策を進めており、その一環として今年2月にTPP加盟を申請。TPP加盟11カ国は6月2日、英国の加盟交渉を開始することで合意した。実現すると、2018年12月の発効以来、初めて新規加盟国を受け入れることになる。
トラス国際貿易相は会談で「TPP加盟により、自由で公正な貿易を支持する英国の姿勢を世界に示すことができる」と強調。西村経済再生相は「他の加盟国とともに、加盟に向けた手続きを精力的に進めていく用意がある」と述べた。
英国の参加が実現すれば、TPP加盟国の国内総生産(GDP)が世界経済に占める比率は13%から16%に拡大する。英政府は交渉開始に先立ち21日に発表した文書で、TPP加盟により、物品貿易では自動車やウイスキーなど主要輸出品目の関税が引き下げられ、加盟11カ国に対する輸出の99.9%が無関税で取引されることになると指摘。30年までに加盟国への輸出が65%増の約370億ポンド(約5兆7,000億円)に達するとの試算を示し、今後TPP加盟国が増えればさらに英国の利益が拡大すると強調した。
TPP加盟には批准国による全会一致の承認が必要で、最終的な結論が出るのは来年以降の見通し。ただ、英国はこれまでに日本やカナダなどと自由貿易協定(FTA)を締結しているほか、6月15日にはオーストラリアともFTA締結で大筋合意しており、特に目立った懸案事項はないことから、早期の交渉妥結を予想する向きもある。