仏伊が新たな条約締結、EU牽引役目指し安保などで協力強化

フランスのマクロン大統領とイタリアのドラギ首相は11月26日、安全保障や外交、経済、貿易、移民など幅広い分野で両国の関係を強化する新たな条約に署名した。英国の離脱などで欧州連合(EU)の求心力が低下するなか、ドイツのメルケル首相の退任を控えて仏伊がEUの牽引役を担う姿勢を示した格好だ。

調印式が行われたローマの大統領官邸として使用されているクイリナーレ宮殿にちなんで、新条約は「クイリナーレ条約」と名付けられた。記者会見でドラギ氏は「両国関係における歴史的瞬間」と評し、同協定は「二国間関係を強化するだけでなく、欧州統合の前進に貢献し、プロセスを加速させるものだ」と強調。懸案の移民政策ではEU加盟国が協調する必要があるとの認識で一致したとつけ加えた。マクロン氏は両国の「深い友情を確立する」条約であり、EU創立メンバーである両国が中心となって「より強く結束し、より民主的で、より独立した欧州を守る」と述べた。

仏伊間ではマクロン氏が首相に就任した2017年に協力条約の構想が持ち上がった。しかし、18年にイタリアでEUに批判的な立場を取るポピュリズム(大衆迎合主義)政党「五つ星運動」と反移民を掲げる「同盟」の連立政権が発足し、移民政策をめぐりフランスとの関係が急速に悪化。副首相らがマクロン氏を公然と批判したことで外交問題に発展し、条約の構想は頓挫した。今年2月に欧州中央銀行(ECB)総裁を務めたドラギ氏が首相に就任したのを機に、両国関係が修復され、条約締結に向けた動きが本格化していた。

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