欧州連合(EU)議長国チェコのシケラ産業・貿易相は8月26日、エネルギー価格の高騰に対処するため、EU加盟国のエネルギー担当相による緊急会合の開催を近く提案すると表明した。10月に定例のエネルギー相理事会が予定されているが、速やかに開催できるよう欧州委員会との調整を急ぐと説明している。
欧州ではロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けてエネルギー供給が不安定化しており、天然ガス価格が記録的な水準で推移する中、各国政府は企業や家計への負担を軽減するための対応に追われている。
シケラ氏はツイッターへの投稿で「エネルギー供給をめぐってわれわれはロシアと戦争状態にあり、こうした状況がEU全体に損害を与えている」と強調。「欧州委とフィアラ首相の合意に基づき、できるだけ早い時期にエネルギー担当相による緊急会合を開催するよう提案する」と述べた。具体的な開催時期については言及しておらず、産業貿易省もコメントを控えている。
欧州では天然ガス価格が再び高騰している。26日には指標となるオランダTTFが1メガワット時あたり一時343ユーロまで上昇し、3月7日に記録した最高値(335ユーロ)を更新した。これは1年前と比べて7倍以上、年初来でも約4倍の水準だ。
ロシアからのガス供給は6月から大幅に減少しているが、ロシア国営ガスプロムは19日、ドイツに天然ガスを運ぶパイプライン「ノルドストリーム」の稼働を8月31日から3日間止めると発表した。設備点検のためと説明しているが、EU側では西側諸国による制裁に対抗してロシアが長期にわたりガス供給を停止させるのではないかとの懸念が高まっている。暖房需要が高まる冬場に向けて天然ガス価格の高騰が続けば、記録的なインフレに一段と拍車がかかり、家計や企業活動を圧迫して欧州経済が冷え込む恐れが指摘されている。