エネルギー価格高騰への対応策、エネ企業から超過利益徴収へ

欧州連合(EU)は9日、ブリュッセルで臨時のエネルギー相理事会を開き、エネルギー価格高騰への短期的な対応策として、EUとして緊急介入する必要があるとの認識で一致した。エネルギー価格や電力料金の高騰で予定外の収益を得ているエネルギー企業から利益の一部を徴収し、家計や企業への支援に充てることなどが対策の柱となる。今回の協議を踏まえ、欧州委員会が13日にも具体案を提示する見通し。月内に再びエネルギー相理事会を開いて欧州委の提案について討議し、早期の実施を目指す。

EUでは電力料金が実質的にガス価格と連動しているため、天然ガス価格の高騰によって電力料金が記録的な高水準で推移している。このため、再生可能エネルギーや原子力などガス以外で発電する事業者は、発電コストが比較的低く抑えられているにもかかわらず、電力料金の高騰で大きな利益を得ている。理事会ではEUが電力料金に上限を設け、超過分の利益をこうした事業者から徴収して家計や企業の支援に回す方針で一致した。化石燃料を販売している事業者もエネルギー価格高騰の恩恵を受けていることから、利益の一部を「連帯貢献金」として徴収する。

一方、天然ガスの価格高騰で資金繰りが厳しくなっている電力会社への支援策を検討することでも合意した。先物取引に必要な担保金の負担が増え、一部の事業者で信用不安が生じる恐れがあるため、政府保証を付与して資金調達しやすくする。

理事会はさらに、天然ガス価格の高騰に歯止めをかけるため、上限設定を含む緊急措置を検討するよう欧州委に求めた。エネルギー相理に先立ち、欧州委のフォンデアライエン委員長は7日、ロシアからパイプラインで輸入する天然ガス価格に上限を設ける方針を打ち出していた。欧州メディアによると、理事会ででは大半の加盟国が上限設定の必要があるとの認識で一致したものの、ロシア産に限定する案は十分な支持を得られなかったもようだ。

ロイター通信によると、バルト3国などはロシアが戦争を継続するための資金源を断つ手段として有効と主張したのに対し、現在もロシア産エネルギーへの依存度が高い中・東欧諸国は、ロシアが事実上の追加制裁に反発して欧州向けのガス供給を停止するとの懸念を表明。最終的にロシアを名指しすることは避け、パイプライン以外で輸入される天然ガスや液化天然ガス(LNG)の扱いを含めて検討するよう欧州委に要請した。

このほか電力需要の削減に向け、欧州委はピーク時の電力使用に対して拘束力を持つ削減目標を設定することなども検討する。