スウェーデンの国営鉱業会社LKABは12日、北部キルナで欧州最大のレアアース(希土類)鉱床を発見したと発表した。欧州は携帯電話をはじめとする電子機器や電気自動車(EV)などの製造に不可欠なレアアースをほぼ中国からの輸入に頼っており、スウェーデンでの採掘が可能になれば中国依存を低減できると期待されている。
LKABによると、同社が採掘権を所有する鉱山の隣接地で発見されたレアアース酸化物の埋蔵量は100万トン以上で、確認されているレアアース鉱床としては欧州最大規模という。ただ、米地質調査所(USGS)が試算した世界の推定埋蔵量1億2,000万トンの1%にも満たない。
スウェーデンは1月から欧州連合(EU)議長国となっており、これに合わせて欧州委員会の代表が同国を訪問したタイミングで今回の発表が行われた。
スウェーデンのブッシュ・エネルギー相は記者会見で中国とロシアに言及し、「EUは原材料を第三国に依存しすぎている。グリーンエネルギーへの移行に欠かせない原材料の供給に関して、われわれ自身で責任を持たなければならない」と指摘。そのうえで「今回の発見を機に、EUにおける自給体制の構築と中国依存からの脱却が始まる」と強調した。
LKABのヤン・モストロム最高経営責任者(CEO)は「レアアース鉱床の発見は周辺地域やスウェーデンだけでなく、欧州や気候変動対策にとっても朗報だ」と述べ、年内に採掘許可を申請する方針を示した。ただ、採掘が環境に及ぼすリスクが懸念されるため、当局による審査が長引いて実際に採掘や出荷を始めるまでに10~15年かかる可能性があると警告。スウェーデンやEUによる認可プロセスが簡素化されれば、この期間を半分程度に短縮することができるとの考えを示した。
欧州委員会は2030年までにレアアースの需要が現在の5倍に拡大すると予測しているが、同委の統計によると、21年にEU域内で使用されたレアアースの98%が中国から輸入されたものだった。EUはこうした現状を踏まえ、レアアースなど戦略的に重要な鉱物資源に関しては、調達先を多様化して特定の国への依存を低減するため、加盟国に対して環境に配慮しながら独自の採掘能力を高めるよう促している。