EUと英の北ア通商ルール巡る協議、データ共有で合意

欧州連合(EU)と英政府は9日、英領北アイルランドの通商ルールを巡る協議を行い、英本土から北アイルランドに流入する物品の通関データを共有することで合意した。これを機に停滞している他の主要問題に関する協議も前進させたい考えだ。

離脱協定では、EU加盟国のアイルランドと国境を接する英領北アイルランドを実質的にEUの関税圏に残し、英本土との間で通関手続きを行うよう定める取り決めが盛り込まれた。これによって北アイルランドが事実上、EU単一市場と関税同盟に残ることで、英本土から北アイルランドに流入する物品については国内の移動であるにもかかわらずEUの規制が適用され、通関・検疫が必要となる。

しかし、英側はこうした「北アイルランド議定書」の規定を改正し、英本土から北アイルランドに入る物品の通関・検疫手続きを不要とすることなどを目指している。これにEU側が反発し、北アイルランドの通商ルールを巡る話し合いは難航が続いていた。

欧州委員会のシェフチョビチ副委員長と英クレバリー外相の合意は、EUが英のITシステムにアクセスし、通関データをリアルタイムで入手できるようにするというものだ。EUは英国製の物品が北アイルランド経由でアイルランドなどEU加盟国に裏口輸出されるのを防ぐため、データを提供するよう求めていた。これに英国側が応じた形となる。

シェフチョビチ副委員長とクレバリー外相は共同声明で、双方間の信頼が構築され、他の問題での協議進展に向けた新たな基盤が整ったとコメントしている。

北アイルランドの通商ルールに関する協議は、ジョンソン政権時に英政府が議定書の一部を一方的にほごにする「北アイルランド議定書法案」を議会に提出し、EUの猛反発を招くなど対立が激化し、ほとんど進んでいなかった。ジョンソン氏の退陣で風向きが変わり、22年11月には英スナク新首相と欧州委のフォンデアライエン委員長が初会談し、摩擦解消に向けて協議を進めることで合意していた。

シェフチョビチ副委員長とクレバリー外相は16日に再会談し、他の問題での協議を行う予定だ。

上部へスクロール