欧州委員会は14日、米グーグルがオンライン広告事業をめぐり、EU競争法に違反している疑いがあるとして、同社に異議告知書を送付したと発表した。告知書の送付は競争法違反に対する是正手続きの第1段階。欧州委はグーグルに同事業の一部の売却を求めている。同社が応じなければ、巨額の制裁を科される恐れがある。
広告事業はグーグルにとって経営の柱で、広告配信のしくみや広告枠の販売、広告出稿の仲介など、オンライン広告(アドテック)市場で強い影響力を持っている。欧州委は2021年6月、グーグルが同市場での支配的な地位を悪用し、公正な競争を阻害している疑いがあるとして、本格的な調査を開始していた。
調査の結果、広告出稿に際して自社の広告技術を優遇し、広告主やパブリッシャー(広告主のメッセージを表示する広告枠を供給する事業者)の双方に不利益をもたらしている疑いが強まったとして、異議告知書を送付した。
グーグルは反論の機会を与えられる。欧州委が最終的に違法と認定した場合は、世界全体の売上高の最大10%に相当する制裁金の支払いを命じられる可能性がある。制裁を避けるには、競争上の是正措置を講じなければならない。
欧州委のベステアー上級副委員長(競争政策担当)は記者会見で、「同問題を解決するには、グーグルに対象事業の一部を強制的に売却させるしかない」と発言。具体的な売却対象として、アドエクスチェンジ(広告枠市場)のプラットフォーム「AdX」、ウェブメディア向けの広告配信を管理するプラットフォーム「ダブルクリック・フォー・パブリッシャー(現グーグル・アドマネージャー)」の名前を挙げた。
グーグルにとってオンライン広告はドル箱事業で、22年の売上高の79%を同事業が占めた。一部であっても売却は大きな痛手となる。同社は声明で、欧州委の調査について「当社の広告事業の狭い側面に焦点を絞っている」として批判し、反論していく意向を表明した。