自然界の仕組みを工学に応用する生体工学に関するドイツの産学研究プロジェクト。柑橘類のフルーツであるポメロの分厚い皮や、魚のうろこ、甲殻類などの構造・機能を分析し、その保護機能を工業製品に応用できるかを研究した。
実施期間は2013年11月~2016年10月までの3年間。プロジェクトを主導した高級車大手のBMWグループのほか、スポーツ用品大手のアディダス、スノーゴーグルやヘルメットなどを製造するアイウェア・ヘルメットメーカーのウベックス(UVEX)、スポーツ用のプロテクターや装具、リハビリ用品などを製造するオルテマ(ORTEMA)、3Dプリンター(積層造形)技術のエンジニアリング会社フェニックス(phoenix)、デンケンドルフ繊維技術・プロセス工学研究所、バイロイト大学、フライブルク大学などが参加した。資金面ではドイツ連邦教育研究省(BMBF)が支援した。
自然界の仕組みを参考にして開発した素材のプロトタイプでは、従来の素材に比べて最大20%の軽量化、抵抗性、安定性の向上が確認されたという。また、製造工程で必要な材料が減少し、生産コストの削減にも寄与することが分かった。
フェニックスは、3Dデータから製造する積層造形(ALM)やラピッドマニュファクチャリングに関するノウハウを投入し、経済性に優れた生産コンセプトの開発で協力した。
BMWでは今回の研究成果を、手袋やプロテクターインサート(プロテクターの中敷き材)など、組み立て作業に携わる従業員の保護用具に活用する方針。また、自動二輪用のヘルメットやプロテクターなどにも活用できると見込んでいる。
ウベックスはスキーなどのスポーツ用ヘルメット、アディダスはバスケットボールやサッカーなどで使用する装具に研究成果を活用できると見込んでいる。