ドイツのハノーファーレーザセンター(LZH)とブラウンシュヴァイク工科大学の宇宙飛行システム研究所(IRAS)が共同で実施する月面における積層造形(AM)技術(3Dプリンタ)に関する研究開発プロジェクト。
月の表面に積もった粉塵(レゴリス)をレーザーで溶かし、建材として利用できるようにする。2021年にも月面で同技術を実証試験できる見通し。
将来においては、宇宙飛行だけでなく、惑星などに滞在するようになる可能性がある。その際、宇宙滞在に必要なインフラを建設するための材料を宇宙に運ぶためには膨大な費用がかかる。このため、LZHとIRASは、月面上のレゴリスを活用し、例えば、着陸スペースや道路などを整備するための建材を製造する技術を研究している。
研究チームが開発した積層造形(AM)システムは、重量が3キログラム以下と小型で軽量な設計となっている。
民間宇宙船や月面を移動し観測するための車両である月面探査車(ローバー)などを開発するPTScientists(本社:ベルリン)が2021年に計画する月面探査では、LZHとIRASが開発したレーザーシステムも一緒に月へ持ち込まれる予定。
PTScientistsが開発したローバーの車体の下に設けられたトンネル状の部分にレーザーシステムを組み込む計画で、現在は、ローバーのトンネル部分に合うようにデザインを調整している。その後、レーザーシステムが、宇宙飛行における振動や温度差などに耐えられるかどうかの耐久試験を実施する予定。
なお、当該プロジェクトは、フォルクスワーゲン基金が約64万ユーロを支援している。フォルクスワーゲン基金は、ドイツの連邦政府とニーダーザクセン州政府が1961年に設立したもので、独自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)は同基金の運営には関係していない。
第2次世界大戦後に、連邦政府とニーダーザクセン州がヴォルフスブルクのVW工場を株式会社化して資本の60%を売却し、民営化した際に得た収益を基金としている。