2010/1/4

総合 –EUウオッチャー

EUの新指導体制スタート、初代大統領が執務開始

この記事の要約

EUのファンロンパイ大統領が1日、執務を開始した。大統領職は12月に発効したEUの新基本条約「リスボン条約」の目玉として新設されたポストで、EUの新指導体制がいよいよスタートする。ただ、EU議長国、欧州委員会の委員長との […]

EUのファンロンパイ大統領が1日、執務を開始した。大統領職は12月に発効したEUの新基本条約「リスボン条約」の目玉として新設されたポストで、EUの新指導体制がいよいよスタートする。ただ、EU議長国、欧州委員会の委員長との役割分担という問題があり、新体制がうまく機能するかどうかが大きな注目点となる。

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EU大統領は任期2年半(1回の再選可能)。加盟国が半年交代で議長国を務める従来のシステムでは政策の一貫性が保てないとして新設された。EU首脳会議の常任議長を務めるほか、EUの対外的な顔となる。EUは11月の首脳会議で、ベルギー首相だったファンロンパイ氏を初代大統領に選出した。

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首脳会議は輪番制が廃止されるが、閣僚理事会はリスボン条約で新設されたEU外相が主宰する外相理事会を除き、従来と同じく加盟国が持ち回りで議長を務める。1日からスペインが議長国に就任した。また、EUの政策は内閣に当たる欧州委員会が立案する。このため、EUはファンロンパイ大統領、議長国スペインのザパテロ首相、バローゾ欧州委員長の3頭体制となり、小国出身で知名度の低いファンロンパイ大統領がどこまで存在感を示すことができるかは未知数だ。海外からは「EUに連絡する時、誰に電話すればいいのか」(キッシンジャー米元国務長官)といった声も出ている。

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とくに問題視されているのが、EU議長国との役割分担。欧州委が提案する政策は首脳会議で決定されるが、その地ならしは議長国の担当閣僚が議長を務める閣僚理事会で行われ、そこで方向性が決まる場合がほとんどだ。このため、大統領が主導権を発揮して加盟国の意見調整を図る機会が限られることもあり得る。

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さらに、ファンロンパイ大統領がEUの代表となる第3国との首脳会議についても、2010年上期に開かれる米国、中南米諸国、モロッコなどとのサミットはスペインが主催する。スペインのモラティノス外相は「会議はファンロンパイ大統領が取り仕切る」と大統領を立てながらも、「ザパテロ首相が傍らで重要な役目を負う」としており、実権はあやふやな感がぬぐえない。

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EUは当面、手探りで新体制の運用を進める。まずファンロンパイ大統領とスペインが “共生”の良いモデルを構築できるがどうかが大きな試金石となるのは確実。ザパテロ首相は「私の議長国としての半年間の任期で第一の課題は、機構面での地固めをすることだ。大統領がリスボン条約によって与えられた機能をはっきりとさせ、最大限に発揮できるようにしたい」と述べ、ファンロンパイ大統領が職務を円滑に遂行するため、全力で補佐することを明言した。

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