2010/1/4

環境・通信・その他

EUがWIPOインターネット条約批准、デジタル時代の著作権保護を強化

この記事の要約

EUおよび加盟各国は先ごろ、「著作権に関する世界知的所有権機関(WIPO)条約(WCT)」と「実演およびレコードに関するWIPO条約(WPPT)」を批准した。これにより、WCTおよびWPPTの締約国はそれぞれ88カ国、8 […]

EUおよび加盟各国は先ごろ、「著作権に関する世界知的所有権機関(WIPO)条約(WCT)」と「実演およびレコードに関するWIPO条約(WPPT)」を批准した。これにより、WCTおよびWPPTの締約国はそれぞれ88カ国、86カ国となった。

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WCTとWPPTはデジタル化・ネットワーク化の進展に対応した著作権および著作隣接権保護の国際的な枠組みで、「WIPOインターネット条約」とも呼ばれる。両条約は1996年12月にWIPO外交会議で採択され、30カ国の批准を受けてそれぞれ2002年に発効した。 

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WCTはインターネットなど情報関連技術の進歩に伴う複製・伝達手段の発達によって著作物の利用形態が多様化している点を踏まえ、既存の国際的枠組みであるベルヌ条約よりさらに踏み込んだデジタルコンテンツの保護について規定している。具体的には公衆への著作物の伝達に関する権利(公衆送信権、送信可能化権)、コンピュータープログラムやデータベースの保護、技術的保護手段の回避などに関する規定を置いている。

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一方、WPPTは実演家の人格権を保護すべき旨を明確に定めている点に最大の特徴があり、実演家の生演奏に係る複製権・放送権・公衆への伝達権、レコードに係る実演家やレコード製作者の経済的権利などについて規定している。

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EUは2000年にWCTおよびWPPTの批准を正式に決定し、両条約に沿って2001年に「情報社会における著作権および関連権の一定の側面のハーモナイゼーションに関する指令(通称:情報社会指令)」を採択した。すべてのEU加盟国はすでに国内法を整備して同指令の規定を実施している。

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欧州委員会のマクリービー委員(域内市場担当)は声明で「WIPOの2条約は技術の進歩に対応した著作権保護の基礎を築いた。技術革新が加速するなかでクリエイターとクリエイティブ産業の保護が従来にも増して急務になっている」と指摘。EUおよび加盟国の批准を機に、さらに高いレベルの著作権保護の実現に向けた議論の前進に期待を表明した。一方、WIPOのガリ事務局長は、インターネットの利用促進とオンラインコンテンツの発展を牽引するEUの批准により、世界的規模でデジタル社会における創造性の発展に弾みがつくとコメントした。

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