2010/1/18

競争法

欧州委が製薬大手の特許戦略を調査、「和解金」の商慣行が焦点に

この記事の要約

欧州委員会は12日、複数の大手製薬会社に対し、ジェネリック(後発)医薬品メーカーとの特許侵害訴訟における和解内容について情報提供を求める書簡を送ったことを明らかにした。欧州委は後発薬の参入を遅らせることを条件に、特許を持 […]

欧州委員会は12日、複数の大手製薬会社に対し、ジェネリック(後発)医薬品メーカーとの特許侵害訴訟における和解内容について情報提供を求める書簡を送ったことを明らかにした。欧州委は後発薬の参入を遅らせることを条件に、特許を持つ製薬会社がジェネリック薬メーカーに「和解金」を支払う業界の慣行を問題視しており、2008年7月1日-2009年12月31日の間に締結された和解合意書の写しを提出するよう求めている。

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欧州委は大手製薬会社が特許の囲い込みなどさまざまな方法でジェネリック薬の投入を遅らせているとして、2008年1月から欧州医薬品市場における競争状況について広範な調査を進めている。これまでの調査から、大手製薬会社は1つの医薬品に対して域内各国で複数の特許を取得する「特許集積(パテントプール)」と呼ばれる手法を使ったり、特許侵害訴訟を起こして和解に持ち込み、ジェネリック薬メーカーに金銭を支払う「リバースペイメント」を通じて後発薬の投入時期を遅らせることで、販売方法や地域などに制限を加えていることが判明。欧州委は特にリバースペイメントを問題視し、業界で広く行われているこうした商慣行はEU競争法が禁止する市場支配的地位の乱用や競争制限的行為にあたるとの見方を強めている。

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欧州委はジェネリック薬メーカーとの和解合意書の提出を命じた製薬会社の具体名を公表していないが、これまでに英グラクソ・スミスクラインと英・スウェーデン資本のアストラゼネカが欧州委から書簡を受け取ったことを認めている。このほか、仏サノフィ・アベンティス、スイスのロシュ、ノバルティスなども対象となっているもようだ。欧州委のクルース委員(競争政策担当)は声明で「ブランド医薬品メーカーとジェネリック薬メーカーの特許に関する和解契約、とりわけ後発薬の投入時期を遅らせる見返りとしてジェネリック薬メーカーに和解金が支払われるケースに注目している。いかなる目的で、誰が、どのような条件でこうした和解が成立しているかを注意深く監視する必要がある」と説明。各社から提出される和解書の内容を分析し、必要に応じて個別に追加情報の提供を要請する方針を示している。

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