2010/2/1

産業・貿易

米政府のボーイング補助金問題、欧州委がWTOの判断遅れを非難

この記事の要約

航空機メーカーに対する補助金めぐり、米国とEUがそれぞれ世界貿易機関(WTO)に提訴している問題で、欧州委員会の報道官は1月25日、米政府によるボーイングへの資金支援に関するWTOの判断が遅れていることについて強い不満を […]

航空機メーカーに対する補助金めぐり、米国とEUがそれぞれ世界貿易機関(WTO)に提訴している問題で、欧州委員会の報道官は1月25日、米政府によるボーイングへの資金支援に関するWTOの判断が遅れていることについて強い不満を表明した。WTO紛争処理小委員会(パネル)は昨年9月、EU加盟国からエアバスへの資金支援は違法な補助金にあたるとの中間報告をまとめており、ボーイングへの支援策についても昨年末までに同様の判断を下すとの見方が有力だった。しかし、WTOは今年に入り、ボーイングへの補助金に関する中間報告は6月になるとの見通しを示していた。

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欧州委通商総局のホーマン報道官は定例会見で、航空機をめぐる米国との通商摩擦に言及。「EUはWTOに持ち込まれた2つの事案に対する中間報告のタイミングに大きなズレが生じる事態を懸念している。個々の紛争処理プロセスの独立性は尊重するが、両事案には明確な共通点があり、EUとしては大きく異なる判断が下されるべきではないと考えている」と語った。

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WTOを舞台とする過去最大規模の通商紛争で焦点となっているのは、エアバスとボーイングの新たな主力旅客機「エアバスA380」と「ボーイング787(通称ドリームライナー)」の開発に関連した支援策。航空機市場で急速にシェアを伸ばし、ボーイングと肩を並べる企業に成長したエアバスが依然としてEU諸国から公的補助を受けているのはWTOの協定に違反するとの米側の主張に対し、EUはボーイングも公的支援を受けて開発した軍用機向けのテクノロジーを活用してドリームライナーの開発を進めており、これは米政府による間接的な補助金にあたると反論。双方は2004年10月、両社に対する支援策は不当な補助金にあたるとして相次いでWTOに提訴した。WTO は年内に両事案について最終判断を示す見通しだが、EUと米国のいずれかあるいは双方が裁定を不服として上訴した場合、決着までにさらに数年を要する可能性がある。

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