欧州委員会は2月25日発表した暫定経済予測で、2010年のユーロ圏の実質域内総生産(GDP)成長率が0.7%になるとの見通しを示した。景気回復は進むものの、外需頼みで力強さに欠け、低水準の成長にとどまるとみている。ギリシャの財政危機に端を発した南欧諸国の信用不安による金融市場の動揺が続くなか、欧州委は「最近の金融市場の動きが示すように、今回の予測を取り巻く不透明感は強い」と回復が足踏みすることへの警戒感を強めている。(表参照)
\欧州委は春と秋に詳細な経済予測を発表するが、中間期に暫定的な予測を出している。今回の暫定予測はドイツ、フランス、イタリア、英国、スペイン、オランダ、ポーランドのEU主要7カ国のデータに基づいてまとめたもの。EUベースの予想成長率も0.7%だった。ユーロ圏、EUとも昨年11月の秋季予測から据え置かれた。
\国別の成長率は、ドイツ、フランス、イタリアは秋季と同じ。スペインはマイナス0.6%となり、マイナス幅は秋季の同0.8%から上方修正されたものの、なお景気後退が続く。英国は付加価値税(VAT)の減税が終了した影響で、0.9%から0.6%に下方修正された。
\ユーロ圏は昨年7-9月期に前期比0.4%にプラス成長に転じたが、10-12月期はドイツがゼロ成長にとどまったことが響いて成長率が0.1%に失速した。欧州委は2010年1-3月、4-6月、7-9月も前期比0.2%の低成長が続き、10-12月になっても同0.3%にとどまると予想している。レーン委員(経済通貨問題担当)は記者会見で「景気は回復しているが、まだ脆弱だ」と語った。
\ユーロ圏の景気回復が足踏み状態なのは、金融・経済危機を受けて各国が導入した景気刺激策の効果が一巡し、内需を活発化させる材料に欠けていることがある。新興国を中心とする世界経済の回復が欧州より進んでいることで、輸出環境は好転しているが、欧州委はそれが内需を刺激するには至っておらず、設備投資や住宅投資は低迷していると指摘。このため雇用状況が依然として厳しく、内需の柱である個人消費が伸びないという悪循環を招いている。金融市場も2009年に安定化したが、「バランスシートの調整は完了しておらず、不安が残る」としている。
\そして大きな不安要素となっているのがギリシャの財政危機。ギリシャ政府は財政再建を誓っているが、緊縮政策が国民の反発を浴び、24日には官民労組が全土で大規模なストライキを実施して各地で混乱が発生し、EUに約束した財政赤字削減計画を実施できるかどうか危ぶまれている。
\これを受けてスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)などがギリシャ国債のさらなる格下げを予告。ユーロの信用が揺らぎ、25日にユーロは対円で1年ぶりの安値に急落した。こうした状況が景気回復に重くのしかかっている。市場では景気見通しの悪化を受け、欧州中央銀行(ECB)が利上げを当面見送り、年内は過去最低水準の現行金利を続けるとの見方が多い。
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