2010/3/8

総合 –EUウオッチャー

欧州委が20年までの成長戦略発表、環境分野に重点投資

この記事の要約

欧州委員会は3日、向こう10年間のEUの成長戦略「欧州 2020」を発表した。世界的な金融・経済危機を教訓に、加盟国が政策面での連携を強化して効率的に問題に対処し、域内経済の持続的な成長と雇用の促進を図る。具体的には地球 […]

欧州委員会は3日、向こう10年間のEUの成長戦略「欧州 2020」を発表した。世界的な金融・経済危機を教訓に、加盟国が政策面での連携を強化して効率的に問題に対処し、域内経済の持続的な成長と雇用の促進を図る。具体的には地球温暖化対策を中心とする環境技術の開発促進や、研究・開発(R&D)投資の拡大などが柱となる。欧州委は今月25、26日に開くEU首脳会議で加盟国に戦略案の承認を求める。

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「欧州 2020」は、EUを2010年までに世界で最も競争力のある経済圏に成長させることを目標に掲げた「リスボン戦略」に代わる新たな成長戦略。欧州委のバローゾ委員長は「経済危機によってEUが抱える根本的な問題が露呈した。欧州経済は成長が鈍化しており、将来が危機にさらされている。EUは弱点を克服して知識ベースの新たな経済モデルを構築し、低炭素経済を実現して雇用を創出しなければならない」と強調。加盟国が結束して景気回復に取り組まなければ「失われた10年を招くことになる」と警告した。

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欧州委の戦略案には20年までに◇20-64歳の就業率を現在の69%から75%以上に引き上げる◇域内総生産(GDP)に占めるR&D投資の比率を現在の1.9%から3%に引き上げる◇中等教育における離脱者の割合を現在の15%から10%以下に引き下げる一方、30-34歳のグループにおける大卒者の割合を現在の31%から40%以上に引き上げる◇現在およそ8,000万人に上る域内の貧困層を4分の3に減らす――などの数値目標が盛り込まれている。

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欧州委はこれらの目標達成に向けた具体策として◇技術開発や研究の成果が製品化につながるよう、EUレベルで規制改革や標準化を推進し、域内企業の競争力を強化する◇大学教育の充実や研究機関への支援などを通じて内外の優秀な人材を確保し、専門知識を持つ労働者が域内で職場を移動しやすい環境を整える◇EUレベルで環境分野への戦略的な投資を推進し、経済危機の収束後に域内産業が日米や新興国と競争できる地盤を築く◇地球温暖化対策に関連した20年までの数値目標(①CO2排出量を1990年比で20-30%削減する②エネルギー効率を20%改善する③再生可能エネルギーの利用比率を20%まで引き上げる)を着実に達成する――などを打ち出した。欧州委は温暖化対策の中期目標がすべて達成された場合、20年までに石油と天然ガスの輸入代金が600億ユーロ削減され、GDPを0.6-0.8ポイント押し上げると試算している。

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さらに深刻な財政危機に直面するギリシャのケースを踏まえ、欧州理事会(EU首脳会議)が加盟国の財政政策と成長戦略に基づく目標の達成度を監視し、取り組みが不十分な国に是正を求める仕組みの導入を提案している。ただ、目標を達成できない国に対する制裁は見送る方針で、実効性を疑問視する声も出ている。

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