欧州委員会は2月26日、金融システムの安定化を目的とした銀行の資本要件に関するEUルールの見直しを提案した。EU加盟国は金融危機の再発防止に向け、昨年11月に高リスクの証券化商品を保有している銀行に対し、自己資本の積み増しを求めることなどを柱とする銀行の自己資本・報酬規制改革案の内容で合意したが、欧州委は昨年4月の20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)で合意した「金融システムの強化に関する宣言」に基づき、新たに流動性リスク管理の強化などを打ち出した。欧州委は4月16日まで見直し案に対する意見募集を行い、各国の金融当局や業界からの反応を踏まえて今年後半に法案を提出する方針を示している。
\欧州委の見直し案は「資本要件に関する指令(CRD)」の第4次改正に向けたたたき台となるもの。まず、今回の金融危機では緩和的な金融環境の下で欧米を中心に多くの銀行で資金流動性が枯渇した反省を踏まえ、流動性比率に最低基準を設けて流動性リスク管理を強化することを提案している。また銀行は将来のリスクに備えて自己資本比率を引き上げるだけでなく、資本の質を高めて透明性と一貫性を確保する必要があるとして、自己資本の定義の見直しを提案している。さらに銀行の財務の健全性を示す新たな指標として、自己資本に対する有利子負債など他人資本の割合を示すレバレッジ比率を導入することや、融資先の信用リスクの開示義務を強化することなどが盛り込まれている。
\欧州委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は「危機からあらゆる教訓を得ることが不可欠だ。金融機関の健全性と堅実性を高めることが極めて重要で、将来の危機に備えて新たなルールを導入する必要がある」と強調している。
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