2010/3/1

競争法

アイルランドの銀行不良資産買い取り計画、欧州委が承認

この記事の要約

欧州委員会は2月26日、アイルランド政府が国内の大手銀行が抱える不良資産を一括管理する受け皿機関「国家資産管理機関(NAMA)」を創設する計画を承認したと発表した。銀行の財務改善によって貸し渋りが解消され、金融市場の安定 […]

欧州委員会は2月26日、アイルランド政府が国内の大手銀行が抱える不良資産を一括管理する受け皿機関「国家資産管理機関(NAMA)」を創設する計画を承認したと発表した。銀行の財務改善によって貸し渋りが解消され、金融市場の安定化と信頼回復につながると判断した。

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アイルランド政府は昨年9月、NAMAを通じて国内大手5行から800億ユーロ相当の不良資産を買い取る計画を打ち出した。バランスシートから不良資産を切り離して銀行の経営を安定化させ、貸し渋りの解消を図るのが狙い。対象となるのはアングロ・アイリッシュ銀行、アライド・アイリッシュ銀行、アイルランド銀行、アイリッシュ・ネーションワイド・ビルディング・ソサイエティ、エデュケーショナル・ビルディング・ソサイエティが保有する不動産融資関連の不良債券で、簿価より30%低い540億ユーロでNAMAに移管するという内容だ。

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欧州委が受け皿機関による不良資産処理構想を承認したのはドイツに続いてアイルランドが2カ国目。同スキームは大手銀行に対する国家補助にあたるものの、不良資産の買い取り価格が簿価に比べて低く設定されていることなどから、金融市場における競争が著しく阻害される恐れはないと判断した。

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アルムニア委員(競争政策担当)は「アイルランドは欧州で最も深刻な金融危機の影響を受けた市場の1つであり、不動産バブルが状況をさらに悪化させた。不動産融資に関連した不良資産処理は銀行の財務改善の鍵を握っており、NAMAの創設が金融市場の回復と正常化につながる」と説明している。

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欧州委の決定を受け、アイルランドのレニハン財務相は同日、NAMAを通じて今月中に大口債務者10社に対する170億ユーロ相当の不良債権を買い取り、残りについても年内にNAMAへの移管を完了したい考えを明らかにした。

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