2010/3/22

産業・貿易

ヘッジファンド規制合意できず、英の反対で採決延期

この記事の要約

EU加盟国は16日、ブリュッセルで財務相理事会を開き、ヘッジファンドと未公開株式を投資対象とするプライベート・エクイティ・ファンドに対する規制案について協議したが、合意に至らず決定を先送りした。金融危機の再発防止に向け、 […]

EU加盟国は16日、ブリュッセルで財務相理事会を開き、ヘッジファンドと未公開株式を投資対象とするプライベート・エクイティ・ファンドに対する規制案について協議したが、合意に至らず決定を先送りした。金融危機の再発防止に向け、これまで規制の対象外だった投機性の高いオルタナティブ投資を厳しく監視すべきだとの立場を取るフランスやドイツと、欧州最大の金融センターを擁する英国の溝が埋まらず、採決を見送った。議長国スペインは任期が終わる6月末までの最終合意を目指す方針だが、加盟国間の足並みの乱れに加えて米国がEUの規制案を強く批判しており、調整は難航が予想される。

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欧州委員会が昨年4月に打ち出した規制案によると、EU内で活動する保有資産が1億ユーロを超えるヘッジファンドの運用者はEUへの登録が義務付けられ、取引方法、資産価値の評価システム、危機管理システムなどについて定期的に当局の検査を受けなければならない。一方、プライベート・エクイティは保有資産が5億ユーロを超えるファンドが規制の対象となり、投資家に業績に関する詳細情報を開示することが義務付けられる。域外のファンドも規制の対象となるため、ガイトナー米財務長官は先に欧州委のバルニエ委員(域内市場・金融サービス担当)に書簡を送り、EUの規制が米国のファンドに対する「差別」となり、欧米間の対立を招きかねないと警告していた。

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英国には欧州市場で活動するヘッジファンドの80%、プライベート・エクイティ・ファンドの60%が集中しており、金融サービス分野で自国の優位性を維持したい英政府は緩やかな規制にとどめるべきだとして法案の見直しを求めている。ブラウン首相は総選挙を控えたこのタイミングで自国に不利な規制案が採択される事態を回避するため、議長国に採決の延期を申し入れ、財務相理での決定が先送りされた。ダーリング英財務相は会議後、「ロンドンは欧州の一大金融センターであり、競争で不利な立場に置かれるような事態は避けなければならない」と発言。採決が見送られたことに安堵感を示した。一方、スペインのサルガド財務相は、今後の交渉で「できるだけ多くの譲歩を引き出したい」と述べ、6月までの合意を目指す方針を強調した。

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