2010/4/19

環境・通信・その他

EUの排出量削減目標は達成可能、シンクタンクが報告書で指摘

この記事の要約

非営利のシンクタンクである欧州気候基金は13日に発表した報告書「ロードマップ2050」で、2050年までに発電からの二酸化炭素(CO2)排出量をゼロにする「脱炭素化」を実現し、温暖化ガス排出量を1990年比で80%削減す […]

非営利のシンクタンクである欧州気候基金は13日に発表した報告書「ロードマップ2050」で、2050年までに発電からの二酸化炭素(CO2)排出量をゼロにする「脱炭素化」を実現し、温暖化ガス排出量を1990年比で80%削減するとしたEUの目標はいずれも達成が可能との見通しを明らかにした。ただし、それには向こう5年間に年間300億ユーロの投資が必要で、同期間内に電力供給源をクリーンエネルギーに転換し始めなければ目標の実現は困難になるうえ、必要な費用が大幅に増加すると指摘している。

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報告書によれば、脱炭素化の実現には2010年までに300億ユーロ、2050年までに650億ユーロが必要と見込まれる。ゼロ炭素電力の生産に向けた努力への着手を2020年まで先送りすれば、年間に必要な費用は2035年に650億ユーロまで膨れ上がり、今年中に着手した場合の約2倍になるとみられる。

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基金の試算では、2020年までは投資コストの増加による電気料金の上昇が予想され、経済生産高は0.02%減少する可能性があるが、同年以降は経済への貢献が期待できる。再生可能エネルギーは生産における運営費が低コストで済むため、設備投資額が増えても、消費者が支払う電気料金への最終的な影響は小さいとみられるためだ。また、計画が進められているサハラ砂漠太陽発電プロジェクトなどにより、域外で生産した太陽エネルギーの利用を拡大するほか、地熱エネルギーの開発を進めれば、EUは必要な電力をすべて再生可能エネルギーに頼ることができるという。

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欧州気候基金はEU27カ国に対し、EUが掲げる野心的な目標を維持するよう強く促すとともに、既存エネルギー消費量の削減と、再生可能エネルギー源の利用拡大を求めている。費用のかさむ化石燃料の輸入需要を60%削減すると同時に、家屋などへのソーラーパネルおよびヒートポンプ設置の推進、現在ある輸送用車両2億台までを電気自動車や燃料電池自動車に交換することなどが含まれる。また、電力の無駄を削減するために発電網の改善が欠かせないとしている。

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なお、欧州委はエネルギー分野に関して年内にも、エネルギー・インフラの増強、国境を超えた協力の推進、民間資金の誘致に向けた包括的な計画案を提示する予定だ。

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