2010/4/19

環境・通信・その他

「ガリレオ」周波数めぐり中国と対立、実用化遅延の懸念も

この記事の要約

EUが推進する欧州独自の全地球測位システム「ガリレオ」計画をめぐり、EUと中国が水面下で火花を散らしている。中国が独自に開発中の全地球測位システム「北斗」とガリレオで利用予定の周波数帯がかちあっているためだ。中国側に周波 […]

EUが推進する欧州独自の全地球測位システム「ガリレオ」計画をめぐり、EUと中国が水面下で火花を散らしている。中国が独自に開発中の全地球測位システム「北斗」とガリレオで利用予定の周波数帯がかちあっているためだ。中国側に周波数利用権が認められた場合、ガリレオの実用化が遅れることは確実。最悪の場合はプロジェクト自体が中止に追い込まれかねず、関係者は危機感を募らせている。『フランクフルター・アルゲマイネ』などがこのほど報じた。

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欧州宇宙機関(ESA)は2000年、ガリレオでの利用に向け国際電気通信連合(ITU)に周波数帯の利用を申請した。中国による当該周波数の利用申請に先立っていったことから、EUは利用権が自らに属すると主張する。一方、中国は同年に当該周波数を利用した試験衛星を打ち上げている。ITUの規定では特定の周波数を最初に利用した国にその周波数が優先的に割り当てられるため、中国サイドも利用権があると譲らない。

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両者の対立の背景には、ガリレオ・プロジェクトのパートナーである中国が政治的な思惑で重要な決定から排除されたことがあるようで、中国はすでに独自に全地球測位システムの構築を推進、EUが利用を予定していた周波数帯での通信衛星打ち上げに取り組んでいる。 EUの欧州委員会は「中国を排除したとする報道は憶測に過ぎない」としてコメントを拒否しているが、ガリレオ・プロジェクトに詳しい専門家は『ファイナンシャル・タイムズ(ドイツ版)』の取材に対し、中国をプロジェクトから締め出したことで「非常に深刻な問題が浮上した」ことを認めている。

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周波数問題の解決策として中国と同じ周波数帯を使い電波干渉を避ける方策をとることが考えられる。ただ、周波数を分け合う格好になるため、軍事目的などの機能やサービスを縮小せざるを得ない。次善の策としてEUが新たな周波数帯を取得すると、2014年に予定するサービス開始があとにずれ込むのは確実だ。2015年には米競合のGPSが第3世代のシステム導入を計画しており、ガリレオそれ自体が技術的に無用の長物になる恐れもある。第3の可能性として中国に慰謝料を払い和解するとの案が挙がっているが、この場合は予算オーバーでプロジェクト中止になりかねない。

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