2010/5/3

競争法

ビザがデビットカード手数料引き下げ、欧州委の是正要求に対応

この記事の要約

国際クレジットカード大手のビザ・ヨーロッパは4月26日、会員が国外でデビットカードを使って買い物をする際の手数料を大幅に引き下げると発表した。欧州委員会は同社の設定したカード手数料が銀行間の競争を制限し、加盟店や消費者の […]

国際クレジットカード大手のビザ・ヨーロッパは4月26日、会員が国外でデビットカードを使って買い物をする際の手数料を大幅に引き下げると発表した。欧州委員会は同社の設定したカード手数料が銀行間の競争を制限し、加盟店や消費者のコスト増につながっているとして是正を求めており、ビザ側がこれに応じた形。欧州委は市場テストを実施して各方面から意見を聞き、問題がなければデビットカードの手数料に関する競争法上の調査を打ち切る。ただし、クレジットカードの手数料については両者の間で合意に至っておらず、調査が継続される。

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問題となっているのは、ビザの会員が国外でクレジットカードやデビットカードを利用した際に生じる「マルチラテラル・インターチェンジ・フィー(MIF)」と呼ばれる手数料。これは決済代行銀行がカード発行銀行に支払う手数料だが、実際には加盟店が負担している。

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欧州委はMIFが加盟店のコスト負担を増大させ、結果的に小売価格を吊り上げている可能性があるとして、ビザと同業のマスターカードを対象に1990年代から調査を進めていた。ビザは02年、MIFの上限を利用額の最大0.7%に制限することに同意し、競争法の適用除外を受けてきたが、同措置が07年末に失効したのを受けて欧州委は08年3月に改めて調査に着手。ビザ側はその後の交渉で、MIFの上限をクレジットカードでは利用額の0.7%から0.61%に、デビットカードについては0.28ユーロから0.18ユーロに引き下げる方針を打ち出した。しかし、欧州委は対応が不十分として09年4月、ビザに対して異議告知書を送付していた。

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ビザは今回、欧州委との間で、向こう4年間にわたりデビットカード利用時に発生する手数料を利用額の最大0.2%に制限することで合意した。カード発行銀行ではなく、ビザ・ヨーロッパが直接MIFを決定しているイタリア、スウェーデン、ギリシャなど9カ国に関しては、国内でのカード利用にも同ルールが適用される。欧州委は同措置により、国内での手数料は現在と比べて約60%、国外での手数料は約30%引き下げられるとの見方を示している。

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なお、マスターカードは昨年4月、クレジットカードとデビットカードのMIFを利用額のそれぞれ0.3%、0.2%に制限する方針を打ち出し、欧州委は同社に対する調査を打ち切っている。ビザの関係者はクレジットカードの手数料をめぐり、欧州委との間で依然として意見に隔たりがあることを認めており、最終的にマスターカードが提示した条件に近い水準で合意できるかが今後の焦点となる。

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