2010/5/10

産業・貿易

欧州独自の格付け機関創設構想、ギリシャ危機で欧州委が検討へ

この記事の要約

欧州委員会は金融規制改革の一環として、欧州独自の信用格付け機関を創設する計画について検討を進めている。同委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)が4日、欧州議会経済金融委員会の公聴会で明らかにした。同委員は3大格付け会 […]

欧州委員会は金融規制改革の一環として、欧州独自の信用格付け機関を創設する計画について検討を進めている。同委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)が4日、欧州議会経済金融委員会の公聴会で明らかにした。同委員は3大格付け会社が市場を独占している現状を改善する必要があるとの認識を示し、欧州に新たな格付け機関を創設することで競争が促進され、信用格付けの透明性を高めることができると説明している。

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EUでは域内で活動する格付け会社に欧州証券規制当局委員会(CESR)への登録を義務付け、当局の監視下に置く制度が12月から導入されることになっており、米国に拠点を置くスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ムーディーズ・インベスターズ・サービス、フィッチ・レーティングスも規制の対象となる。しかし、S&Pが先月末、財政危機に直面するギリシャの長期国債を投機的水準の「BBプラス」に格下げしたのをきっかけに、EU内では米国の格付け会社が欧州各国のソブリン債(各国政府や政府機関が発行・保証する債権)を評価している現状に対する不満が高まっている。

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バルニエ委員は公聴会で、ギリシャの国債がジャンク級まで引き下げられた事態に「苛立ちを覚えた」と発言。「格付け会社は企業だけでなく、国家にとっても極めて大きな力を持っている。信用格付けが金融システムおよび経済全体に及ぼす影響を注意深く観察する必要がある」と指摘した。そのうえで同委員は「格付け会社を多様化して競争を促す必要がある。欧州の格付け機関を創設する方向で作業を進めている」と述べ、ソブリン債を専門に扱う格付け機関の創設を検討していることを明らかにした。ただ、欧州委の関係者によると、構想はごく初期の段階にあり、新たな格付け機関の形態(公的機関か民間機関か)など具体的な計画は固まっていないと説明している。

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こうしたなか、ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領は6日、ファンロンパイEU大統領と欧州委のバローゾ委員長宛てに格付け会社に対する監督体制の見直しを求める共同書簡を送った。両首脳は「欧州の規制下で格付け会社の評価を採用する意義」を見直す必要があると指摘。格付け会社によるソブリン債の評価方法や格付けの公表方法について検証するよう求めた。

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