2010/5/25

総合 –EUウオッチャー

独がユーロ圏国債の空売り禁止、ギリシャ危機受け投機抑制へ

この記事の要約

ドイツ連邦金融督庁は18日、ドイツ国内で取引されるユーロ圏16カ国の国債や、国債を対象とするクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の空売りを禁止すると発表した。ギリシャ危機に乗じた投機的な国債取引を抑え、金融市場の混 […]

ドイツ連邦金融督庁は18日、ドイツ国内で取引されるユーロ圏16カ国の国債や、国債を対象とするクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の空売りを禁止すると発表した。ギリシャ危機に乗じた投機的な国債取引を抑え、金融市場の混乱に歯止めをかけるのが狙い。金融監督庁は「ユーロ圏の国債(価格)の異常な変動が金融市場全体の安定を脅かしている」として、異例の措置に踏み切った。

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空売り禁止は19日から実施され、2011年3月末まで適用される。国内の一部金融機関の株式も対象になる。対象となるのは、ドイツ銀行、コメルツ銀行、ポストバンク、アーレアル銀行、アリアンツ、ハノーバー再保険、ミュンヘン再保険、ゼネラリ・ドイチュランド・ホールディング、MLP、ドイツ取引所の10金融機関。

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ユーロ圏では、ギリシャの財政危機に絡んだ国債などの投機的な金融取引が信用不安を拡大させ、金融市場の混乱を深めているとの批判が強まっている。とくに欧州委員会は、公的債務不履行(デフォルト)のリスクを対象とする金融派生商品であるCDSについて、実際には国債を持たないヘッジファンドが投機目的で短期的な売買を繰り返し、市場の混乱をあおっている恐れがあるとして、EUレベルでの禁止を検討している。ドイツ政府はEUによる規制強化も見越して、先行して単独で空売り禁止に踏み切ったもようだ。

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しかし、ドイツは突然の規制導入は、期待とは逆に市場に動揺を与えた。EUはギリシャに端を発した信用不安の拡大、金融市場の混乱を食い止めるため、国際通貨基金(IMF)と協調して対ギリシャ金融支援に踏み切っただけでなく、他のユーロ圏諸国でギリシャ危機が飛び火し、資金難に陥った場合に備えた7,500億ユーロの緊急融資の枠組みも用意したばかり。にもかかわらず、ドイツが単独で追加措置に踏み切ったことで、状況が予想より深刻で切羽詰っていると受け止められ、市場の不安が増幅されたためだ。これを受けて19日にユーロ安は加速、欧州株も下落した。

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また、ドイツがEUと事前調整することなく、一方的に空売り禁止を打ち出したことに対する波紋も広がっている。欧州委員会のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は19日発表した声明で、「金融市場の動きは不透明、不安定」としてドイツの懸念に理解を示しながらも、「こうした措置は欧州レベルの協調があれば、より効果的だ」と述べ、独断専行にやんわりと釘を刺した。フランスのラガルド財務相も、ドイツは事前に他の国と協議するべきだったとした上で、現時点では同様の空売り禁止措置を講じる考えがないことを表明。オランダ、フィンランドなども追随を否定しており、ドイツが孤立する格好となっている。

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