2010/5/31

総合 –EUウオッチャー

「銀行清算基金」創設を正式提案、特別銀行税を財源に=欧州委

この記事の要約

欧州委員会は26日、EU内の銀行に特別税を課し、将来の破たんに備えた基金を設置することを正式提案した。これは金融危機再発防止策の一環で、銀行税を財源にした「銀行清算基金」を創設し、銀行の経営が行き詰まった場合に必要となる […]

欧州委員会は26日、EU内の銀行に特別税を課し、将来の破たんに備えた基金を設置することを正式提案した。これは金融危機再発防止策の一環で、銀行税を財源にした「銀行清算基金」を創設し、銀行の経営が行き詰まった場合に必要となる破たん処理などの資金を確保しておくというもの。銀行が破たんしても納税者に負担を強いることなく、円滑に処理を進め、金融市場の安定を保つのが狙いだ。2011年の運用開始を目指す。

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同基金創設の構想は、欧州委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)が3月に提唱していた。リーマンショックに端を発した金融危機で、EUでは2008年から09年にかけて域内総生産(GDP)の13%にも相当する規模の公的資金が銀行救済に充てられた反省を踏まえたもの。バルニエ委員はEUの環境汚染で汚染者が処理費用を負担する制度となっていることに触れ、「納税者が銀行を救済するための重いコストを負い続けるのは受け入れられない。“汚染者負担”が原則であるべきだ」として、正式提案に踏み切った。

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基金の規模や、銀行の課税対象など詳細は未定だが、基金は加盟国が個別に設置する。欧州委は危機に陥った銀行の救済には利用せず、市場に大きな動揺を及ぼすことなく、秩序を保ちながら円滑に破たん、清算の処理を進めるのが目的と強調。具体的には、破たんした銀行を他の銀行が引き継ぐまでのつなぎ融資、不良資産分離の費用などに活用することを想定している。銀行税については、資産、負債か利益、ボーナスに応じて課税する方向で検討を進める。

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すでにEUでは、スウェーデンが同様の基金を運営しているほか、ドイツも導入を検討している。欧州委は各国がばらばらに基金を設置すると、ルールの違いで競争条件が異なってくることから、各国がEU共通ルールに沿って基金を設け、将来の金融危機に備えさせるようにする。

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同制度の導入には加盟国と欧州議会の承認が必要。欧州委は6月17日の首脳会議での承認を得た上で調整を進め、10月に詳細をまとめて2011年初めに法案を提出したい考えだ。

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