欧州委員会は2日、EU内で活動する格付け会社に対する規制強化策を発表した。登録制を導入したうえで、新たに創設する欧州証券監督機構(ESMA)が一元的に格付け会社を監視し、違反行為に対して登録取り消しを含めた制裁を課すことができるようにする。EUは金融危機を受けた規制改革の一環として、昨年4月に格付け会社に対する規制案を採択していたが、ギリシャの国債格下げをきっかけに金融市場の混乱が深まったことを踏まえ、透明性確保に向けて一段の規制強化が必要と判断した。EU加盟国と欧州議会の承認を得て2011年の施行を目指す。
\規制は米国に拠点を置くスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ムーディーズ・インベスターズ・サービス、フィッチ・レーティングスを含め、EU域内で活動するすべての格付け会社に適用される。今月からESMAへの登録手続きが開始され、登録された格付け会社はESMAの直接監督下に置かれる。当初は事業展開する国の証券監督当局で構成するグループ(colleges of supervisors)が個別に監視するシステムが想定されていたが、EUレベルでの一元的な監督体制を確立し、格付けの透明性向上を促す。
\具体的にはESMAは格付け手法を含めた情報開示を要求したり、立ち入り調査などを実施することができ、違反した格付け会社に制裁金や業務停止を命じたり、登録を取り消す権限も与えられる。さらに米国の3大格付け会社による独占体制が格付けの信頼性を損ねているとの批判を踏まえ、ストラクチャードファイナンス業務を展開する銀行、投資会社、信用機関などに対し、契約関係にある格付け会社に提供した情報を他の格付け会社にも開示することを義務付け、複数の機関が格付けを行える仕組みを構築する。
\欧州委は先に打ち出した銀行精算基金の構想と併せ、今月末にカナダで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議で格付け会社に対する規制策を提案する方針を示している。バローゾ委員長は「格付け会社に対する規制強化は欧州経済の安定と持続的な成長を実現するための施策の1つであり、金融改革を完成させるための最後のステップだ」と強調。一方、バルニエ委員(域内市場・サービス担当)は「ルール変更は格付け市場における監督体制の強化と透明性の向上につながる。ただ、これは最初の一歩にすぎない」と指摘。さらに詳しく市場分析を行い、必要に応じて追加的な措置を検討する意向を示した。
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