2010/6/14

総合 –EUウオッチャー

ユーロ圏緊急支援制度の詳細決定、財務相会合で正式合意

この記事の要約

ユーロ圏16カ国は7日にルクセンブルクで開いた財務相会合で、財政危機に陥ったユーロ参加国に7,500億ユーロの緊急金融支援を行う制度の詳細について正式合意した。これによりEUの負担で創設される5,000億ユーロの基金のう […]

ユーロ圏16カ国は7日にルクセンブルクで開いた財務相会合で、財政危機に陥ったユーロ参加国に7,500億ユーロの緊急金融支援を行う制度の詳細について正式合意した。これによりEUの負担で創設される5,000億ユーロの基金のうち、600億ユーロは利用可能となった。残る4,400億ユーロについても近く運用を開始できる見込みだ。

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5月のEU財務相会合で決まった緊急支援制度は、ユーロ圏でギリシャ危機が飛び火して深刻な資金難に陥る国が出できた場合に、迅速に融資を行って危機拡大を防ぐのが狙い。ポルトガル、スペインなどが第2のギリシャとなることが懸念される中、あらかじめ支援の枠組みを整えておくことで市場の不安感を払しょくさせたいという思惑もある。

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「ユーロ防衛基金」と呼べる同融資制度は、EUが5,000億ユーロ、国際通貨基金(IMF)が2,500ユーロを負担する。EUの枠組みで柱となる「欧州金融安定基金(EFSF)」は、ユーロ圏各国の政府保証による総額4,400億ユーロ規模の基金。各国の負担額は欧州中央銀行(ECB)への拠出額に応じて決まる。ユーロ圏16カ国のほかスウェーデン、ポーランドが自主的に参加する。

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もうひとつは、欧州委員会がEU予算を担保とする債券発行で資金を調達する600億ユーロの基金。非ユーロ圏の加盟国を対象とする既存の緊急支援枠を500億ユーロから1,100億ユーロに拡大し、ユーロ圏諸国も支援できる形とする。

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EFSFは各国議会の承認が必要。承認国の拠出額が全体の90%を超えた時点で創設され、順調に行けば今月中に運用が始まる見通し。同日の財務相会合では、EFSFをルクセンブルクに置くことが決まった。

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予算の事前チェックで合意

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同日にはファンロンパイEU大統領を座長とするギリシャ危機の再発防止に向けたEU作業部会の会合も開かれ、各国の予算案を事前にEUがチェックすることや、財政規律違反国に効果的な制裁を行うことで合意した。

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EUでは財政規律を定めた安定成長協定に基づき、各国は財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内、債務残高をGDP比60%以内に抑えることを義務付けられている。しかし、違反する国が相次ぐ中、加盟国の予算案を各国議会が承認する前にEU全体で審査し、適切な財政運営が行われているかどうかを各国が相互にチェックする体制にする。各国は毎年春に次年度予算案を、同年の経済成長、インフレ率、税収の見通しなどと合わせてEUに提出し、チェックを受ける。

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規律違反国への制裁に関しては、違反を繰り返す国にGDPの0.5%に相当する制裁金を科すという規定があるが、これまではうやむやに処理され、発動された例はなく、こうした慣行がギリシャなどの財政悪化を招いた一因となっている。今後は自動的に制裁を発動するほか、赤字が上限を超えていない段階でも超過が確実な場合には制裁を発動できるようにする。ファンロンパイ大統領は「これまではGDP比3%という赤信号のときだけ制裁対象だったが、今後は信号がオレンジでも面倒なことになる」と述べ、各国に規律を順守させるため厳しく対応していくことを明らかにした。

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予算事前チェック、制裁措置の詳細は欧州委が詰める。部会は6月の首脳会議までに中間報告をまとめる予定。最終案は10月の首脳会議で決定する見込みだ。

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防衛基金、7,500億ユーロから増額も

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一方、ファンロンパイEU大統領は10日発行のベルギー誌に掲載されたインタビュー記事で、7,500億ユーロのユーロ防衛基金について、資金不足の事態に陥れば増額する考えを示した。同大統領は「現時点では、どの国も救済を求める気配はない」と前置きした上で、「もし不十分であることが分かれば、答えは簡単。増額するだけだ」と語った。

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