2010/7/5

産業・貿易

EUのエアバス支援は「違法な補助金」、WTOパネルが最終報告公表

この記事の要約

欧州の航空機大手エアバスと米ボーイングへの補助金をめぐり、米国とEUがそれぞれ世界貿易機関(WTO)に提訴している問題で、WTOは6月30日、EUによるエアバスへの補助金を違法とする紛争処理小委員会(パネル)の最終報告を […]

欧州の航空機大手エアバスと米ボーイングへの補助金をめぐり、米国とEUがそれぞれ世界貿易機関(WTO)に提訴している問題で、WTOは6月30日、EUによるエアバスへの補助金を違法とする紛争処理小委員会(パネル)の最終報告を公表した。エアバスの超大型旅客機「A380」の開発援助を目的としたEU加盟国による低利融資を違法な補助金と認定し、撤廃するよう求めている。米政府によるボーイングへの支援策については今月16日に中間報告が示される見通しで、その内容によってはEUがWTO上級委員会に上訴する可能性もあり、6年に及んだ欧米間の通商紛争はさらに長期化することになる。

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WTOを舞台とする過去最大規模の紛争で焦点となっているのは、エアバスA380とボーイングの新たな主力旅客機「787(通称ドリームライナー)」の開発に関連した支援策。EU主要国によるエアバスへの補助金が世界の航空機市場で著しく競争をゆがめてきたとする米側の主張に対し、EUはボーイングも公的支援を受けて開発した軍用機向けのテクノロジーを活用してドリームライナーの開発を進めており、これは米政府による間接的な補助金にあたると反論。双方は2004年10月、両社に対する資金支援は不当な補助金にあたるとして相次いでWTOに提訴した。

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ボーイングによると、エアバスは英国、フランス、ドイツ、スペイン政府からA380の総開発費のおよそ3分の1にあたる総額40億ユーロの資金支援を受けたとされる。WTOパネルはこのうち英、独、スペイン政府による超低利融資を違法な補助金と認定。さらにEUの研究・開発プログラムの枠組みからの支援策、仏政府による組立工場の用地提供、独・スペイン政府による自国工場の建設費助成などもWTOルールに抵触すると結論づけ、90日以内に是正措置を講じるよう勧告した。一方、エアバスへの補助金がボーイングの業績に深刻な打撃を与え、米航空機業界で多数の失業者を出す結果を招いたとする米側の主張は退けられた。

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欧州委員会のデ・グフト委員(通商担当)は「今回の報告書は米政府によるボーイングへの補助金に関する中間報告とセットで分析する必要がある。そうすることで紛争の全容を把握することができる。EUとしては引き続き前提条件を設けず交渉による紛争解決を目指す」との声明を発表した。一方、米通商代表部(USTR)のカーク代表は「エアバスへの不当な補助金がボーイングの業績低迷や市場シェアの低下を招き、米経済に深刻な打撃を及ぼした。パネル裁定によってエアバスとの公正な競争条件が整うだろう」とコメントした。

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