2010/7/12

総合 –EUウオッチャー

欧州委が定年退職年齢の引き上げ検討、年金改革に関する意見募集開始

この記事の要約

欧州委員会は7日、少子高齢化が進む中で年金制度を安定的に維持していくため、EU各国は定年退職年齢の引き上げを検討すべきだとする報告書をまとめた。欧州委は経済危機の影響で南欧諸国を中心に財政赤字や雇用情勢の悪化が深刻化して […]

欧州委員会は7日、少子高齢化が進む中で年金制度を安定的に維持していくため、EU各国は定年退職年齢の引き上げを検討すべきだとする報告書をまとめた。欧州委は経済危機の影響で南欧諸国を中心に財政赤字や雇用情勢の悪化が深刻化しており、このままでは年金制度の維持がますます困難になると警告。あらゆる政策を総動員してEU全体で安定的な年金制度を確立する必要があるとして、定年退職年齢の引き上げや規制の見直しなどについて検討を進めるための公開協議を開始した。11月15日まで各方面からの意見を受け付ける。

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報告書によると、EU市民の平均寿命は50年前に比べておよそ5年長くなったが、今後50年でさらに7年伸びる見通し。一方、65歳以上の高齢者1人を支える生産年齢(15-64歳)の人数は2008年の4人から2060年には2人に減少するとみられている。一方、EU27カ国の定年退職年齢は平均61.4歳で、米国や日本、さらに経済協力開発機構(OECD)加盟31カ国の平均63.5歳より低くなっている。

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欧州委のアンドル委員(雇用・社会問題・インクルージョン担当)は「生産年齢人口に対する年金受給者の割合は2060年までに2倍に拡大すると予測されており、現状のままで年金制度を持続させることは不可能だ。我々に与えられた選択肢は給付水準の引き下げか、保険料の引き上げ、あるいは就労期間の延長のいずれかだ」と指摘。各国政府は定年退職年齢の引き上げを検討する必要があるとの認識を示した。ただ、欧州委が加盟国に70歳定年制の導入を働きかけているとの一部報道に関しては、「根拠のない噂」として事実関係を否定している。

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EU諸国では国によって定年退職年齢にばらつきがあり、主要国ではドイツやスペインの65歳に対してフランスは60歳と低くなっている。サルコジ政権は6月に定年を62歳に引き上げることなどを柱とする年金制度改革案を打ち出したが、野党・社会党や労組が強く反対しているほか、定年延長に反対する市民が各地で大規模なデモを実施するなど国民の反発が高まっている。また、深刻な財政危機に直面するギリシャでも、財政健全化策の一環として政府は定年を現在の61歳から63歳に引き上げることなどを盛り込んだ年金制度改革法案を提案しているが、国民の反発が根強く審議の行方は不透明だ。

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