2010/8/30

環境・通信・その他

欧州委がCDMの見直し提言、EU-ETSでのクレジット使用に「質的制限」

この記事の要約

欧州委員会のヘデゴー委員(気候変動担当)は25日、京都議定書が規定するクリーン開発メカニズム(CDM)を抜本的に見直す必要があるとの考えを示し、CDMプロジェクトを通じて獲得したクレジットをEU排出量取引制度(EU-ET […]

欧州委員会のヘデゴー委員(気候変動担当)は25日、京都議定書が規定するクリーン開発メカニズム(CDM)を抜本的に見直す必要があるとの考えを示し、CDMプロジェクトを通じて獲得したクレジットをEU排出量取引制度(EU-ETS)で使用する際に新たな制限を設ける方向で検討を進めていることを明らかにした。排出量取引の国際的な枠組みづくりを目指すロビー団体の国際排出量取引協会(IETA)が同委員に宛てた公開質問状に答えたもので、EU-ETSの第3期がスタートする2013年以降は、CDMプロジェクトの「質」に応じてクレジットの使用を制限するという内容。欧州委の報道官は今年11月にメキシコのカンクンで開かれる国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)までに具体的なルールを提案する方針を示している。

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CDMをめぐっては、先進国が排出削減目標を達成するための安価な方法としての側面が重視される一方、開発途上国の持続的な発展に寄与するというもう1つの目的は十分に反映されていないのが現状。たとえば代替フロン「HCFC-22」の製造過程で排出される強力な温室効果ガス「HFC-23」の回収・分解事業がCDMプロジェクトに認定された場合、二酸化炭素(CO2)換算で大量の排出権クレジットが発生し、それを売却すれば多額の収入を得ることができるため、中国などに相次いで大規模工場が新設されて不必要にHCFC-22が増産されるといった現象が起きている。

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このため環境団体などからはCDMプロジェクトによって達成されたCO2削減量だけでなく、事業の内容に応じて発行するクレジットの量を調整すべきだとの意見が出ている。一方、産業界からは13年以降にEU-ETSで使用が認められるクレジットの要件が明確にならない限り、CDMプロジェクトへの投資計画を策定することができないといった不満の声が上がっている。

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ヘデゴー委員は声明で「CDMは大きな成果を収める一方、環境面の完全性という観点からさまざまな批判の的になっている。より進化した炭素市場の創設に向けた最初のステップとして、CDMを抜本的に見直す必要がある」と指摘。13年以降のEU-ETSとの関連で、代替フロンをはじめとする「産業用ガスの製造プロジェクト」を通じて取得したCDMクレジットの使用に対して「新たな質的制限」を加えるため、具体策の検討に入ったことを明らかにした。

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