2010/10/4

産業・貿易

GM作物の栽培認可めぐる調整難航、加盟国への権限委譲に仏伊反対

この記事の要約

EU加盟国は9月27日の農相会議で遺伝子組み換え(GM)作物の栽培認可手続きについて協議したが、欧州委員会が打ち出した認可権限を各国に委ねる案に対してイタリアやフランスなどが反対を表明し、意見調整がつかなかった。加盟国間 […]

EU加盟国は9月27日の農相会議で遺伝子組み換え(GM)作物の栽培認可手続きについて協議したが、欧州委員会が打ち出した認可権限を各国に委ねる案に対してイタリアやフランスなどが反対を表明し、意見調整がつかなかった。加盟国間の対立を抑えてGM作物の新規認可を促すのが欧州委の狙いだが、反対派は各国に栽培認可の権限を委譲すればEU共通農業政策(CAP)の根幹が揺らぐと主張している。一方、オーストリアやハンガリーなどは今年3月に独BASFのGMジャガイモ「アムフローラ」の栽培を認可した欧州委の決定を強く批判しており、今回の会議でもGM作物をめぐる加盟国の意見対立が浮き彫りになった。

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欧州委が7月に打ち出したGM作物の栽培認可に関する新たな方針は、厳格な安全性評価に基づくEUの認可制度は維持したうえで、加盟国が倫理面や経済的な根拠などに基づいて、独自に国内での栽培を禁止または制限することを認めるという内容。ただし、EUレベルで栽培が認可されたGM作物の流通・販売を阻止することはできない。

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イタリアのガラン農相は会議後の会見で「イタリアはCAPの土台を揺るがしかねない欧州委の提案を支持することはできない」と発言。フランスのルメール農相も「EU共通の意思決定が必要だ。各国に判断を委ねることはEU市民とCAPに誤ったメッセージを送ることになる」と警告した。このほかGM推進派の英国とスペインも、加盟国に難問を突きつけて責任を押し付けることは誤りだと欧州委の姿勢を批判している。

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欧州委は域内農業の競争力強化を図るため、農家の選択肢を増やして非GM作物とGM作物の共存を推進すべきだとの立場だが、域内では依然として推進派と反対派の対立が根強い。このためGM作物の新規認可は停滞気味で、EUが認可したGM作物に対する実際の対応も国によって異なる。欧州委のダッリ委員(保健・消費者政策担当)は先に、欧州委はGM作物に賛成でも反対でもないとの立場を強調したうえで、「今日の世界では1つの現実だ。政治的決断の責任を回避することはできない」と述べていた。

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