2010/11/8

産業・貿易

アザラシ製品禁輸の仮差し止め撤回、判決にカナダなど反発

この記事の要約

欧州司法裁判所の一般裁判所はこのほど、EU域内へのアザラシ製品の輸入を禁止する措置の仮差し止めを撤回する判断を下した。禁輸ルールは8月20日に発効したが、カナダの先住民族イヌイットの団体Inuit Tapiriit Ka […]

欧州司法裁判所の一般裁判所はこのほど、EU域内へのアザラシ製品の輸入を禁止する措置の仮差し止めを撤回する判断を下した。禁輸ルールは8月20日に発効したが、カナダの先住民族イヌイットの団体Inuit Tapiriit Kanatami(ITK)をはじめカナダやグリーンランド、ノルウェーの16団体が同裁判所に差し止めを求め、これがいったんは認められて欧州委員会もこれらの団体については正式決定まで例外的に輸出を容認していた。今回の判決に対してITKなどは上訴する構えだ。

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EUは撲殺など残虐な手法が用いられるアザラシ猟への批判を受けて昨年7月にアザラシの毛皮、肉、油脂およびそれらを用いた製品の輸入を禁止する法案を採択した。先住民族が自給のため伝統的な方法で行うアザラシ猟による製品については対象外としているが、ITKなどは禁輸により市場が縮小し経済的な打撃を受けると主張し、除外規定が必ずしも守られないとの懸念を示している。

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しかし一般裁判所の裁判官は、「原告側は懸念を正当化する具体的な証拠を提示しなかった」と指摘し、差し止めを撤回した。これを受けて欧州委は禁輸措置を全面的に適用することを明らかにしており、欧州司法裁判所が最終的な決定を下すまでは輸入が制限されることになった。

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今回の判決に対してITKは失望と怒りを表明し、禁輸措置について「古臭く信用に値しない植民地主義者の姿勢や動物愛護運動家の意図的に流す偽情報で盲目になっていることを示すもの」と批判。カナダ政府も同措置が不当な輸入制限にあたるとして世界貿易機関(WTO)に提訴しており、「禁輸措置は全くもって不公平」として、畜産のルールに従っているカナダのアザラシ猟師に対する甚だしい差別と評している。ノルウェー政府もすでにWTOに紛争解決を要請している。

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