2010/11/22

総合 –EUウオッチャー

加盟国と欧州議会の予算協議が決裂、重要政策への影響必至

この記事の要約

EU加盟国と欧州議会は15日、双方の代表による調停委員会を開いて2011年予算案について協議したが、交渉期限の16日未明までに妥協点を見出すことができず、協議は決裂した。欧州委員会はただちに新たな予算案の策定作業に入った […]

EU加盟国と欧州議会は15日、双方の代表による調停委員会を開いて2011年予算案について協議したが、交渉期限の16日未明までに妥協点を見出すことができず、協議は決裂した。欧州委員会はただちに新たな予算案の策定作業に入ったが、年内の成立はほぼ不可能で、来年1月以降は当面、10年と同額の暫定予算が組まれる見通し。新たに発足する金融監督機関などは十分な予算を確保できない恐れがあり、重要政策への影響は避けられない情勢だ。

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欧州委は当初、前年比5.9%増の約1,300億ユーロの予算案を提出し、欧州議会もこれを承認した。しかし、巨額の財政赤字を抱える加盟国政府は「2.9%を超えるEU予算の拡大は認められない」と主張し、対立が深まっていた。調停委では欧州議会側が2.9%増で同意する代わりに、予算審議における議会の権限拡大を明文化するよう要求。しかし英国、オランダ、スウェーデンなどがこれを拒否し、協議は決裂した。

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EU加盟国の財務相はEU首脳会議が開かれる12月16日に緊急会合を開き、11年予算案について協議するもようだが、加盟国と欧州議会の双方による承認手続きには数カ月を要するとされ、年内の成立は絶望的。このため新予算が成立するまで、月単位で10年予算の12分の1の暫定予算が組まれる公算が大きくなった。

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EUは金融危機の再発防止に向けた規制改革の一環として、来年1月までに国境を越えて銀行・保険・証券の各セクターを監視する3つの監督機関を新設することになっている。また、昨年12月に発効したリスボン条約に基づき、年内にEUの外務省にあたる「欧州対外活動庁(EEAS)」が発足する予定。欧州委は緊縮財政を進める加盟国側の事情を理解しながらも、こうした新機関の創設費用がかさむことなどを理由に、前年比6%近い予算の増額を提案していた。AFP通信が報じたEU当局者の試算によると、前年と同額の暫定予算が執行された場合、EEASでは2,500万ユーロ、3つの金融監督機関でも合わせて122万ユーロの予算不足に陥るとみられている。

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