2010/12/20

環境・通信・その他

「欧州市民イニシアチブ」が実現、100万人署名で法案要求可能に

この記事の要約

欧州議会は15日の本会議で、EU市民に新たな法律の制定を直接提言する機会を与える「欧州市民イニシアチブ」に関する規則案を賛成多数で可決した。EU加盟国の4分の1以上の国で100万人以上の署名を集めれば、欧州委員会に対して […]

欧州議会は15日の本会議で、EU市民に新たな法律の制定を直接提言する機会を与える「欧州市民イニシアチブ」に関する規則案を賛成多数で可決した。EU加盟国の4分の1以上の国で100万人以上の署名を集めれば、欧州委員会に対して法案の提出を求めることができるようになる。加盟国は14日の閣僚理事会で規則案を承認しており、EU官報への掲載から20日後に発効、1年の移行期間を経て実施される。このため2012年初頭には新規則に基づいて最初のイニシアチブの検討が可能になる見通しだ。

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欧州市民イニシアチブは昨年12月に発効したリスボン条約に盛り込まれた構想。市民の直接的な関与による「参加型民主主義」を推進してEUが抱えるさまざまな課題について国境を超えた議論を促し、EU市民の需要や要請をより的確に政策形成に反映させることを最大の目的としている。

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新規則が定めた手続きによると、7つ以上の異なる加盟国に居住する7人以上の市民で構成する「市民委員会」がイニシアチブを取りまとめ、欧州委に対して請願書を提出する。受理された請願書はオンラインで公開されるが、欧州委が権限を持たない分野や、EUが掲げる基本原則の1つである「欧州的価値観」に反する内容(たとえば死刑制度の復活など)の提言は受理されない。1年以内に手書きまたはオンラインで必要な署名が集まれば、欧州委が提案内容の検討に入り、3カ月以内に対応を決定する。ただし、欧州議会議員の選挙権を持つ18歳以上のEU市民の署名のみ有効と認められ、欧州議会における各国の議席数に750を乗じた数がその国で必要な最低署名数となる。なお、市民委員会には欧州議会が開く公聴会でイニシアチブについて説明する機会が与えられる。

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一方、環境保護団体グリーンピースは欧州市民イニシアチブに基づき、今月9日に遺伝子組み換え(GM)作物の域内での栽培差し止めを求める請願書を欧州委に提出した。欧州委が今年3月、新たなGM作物の栽培認可を再開したことを受けた動きで、GM技術の影響を科学的に検証する新機関の創設などを求めている。ただ、現時点でイニシアチブは施行されていないため、欧州委は今回の請願を新システムの枠組みで取り扱うことはできないとの立場を表明している。

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