2011/3/7

総合 –EUウオッチャー

EUがユーロ圏「競争力協定」の草案提示、独仏案と距離置く内容に

この記事の要約

EUのファンロンパイ大統領(首脳会議常任議長)は2月28日、ユーロ圏17カ国に対して、ドイツとフランスが先ごろ提案したユーロ圏各国の経済政策協調策「競争力協定」の草案を提示した。草案は未公開だが、年金受給年齢引き上げなど […]

EUのファンロンパイ大統領(首脳会議常任議長)は2月28日、ユーロ圏17カ国に対して、ドイツとフランスが先ごろ提案したユーロ圏各国の経済政策協調策「競争力協定」の草案を提示した。草案は未公開だが、年金受給年齢引き上げなど厳しい措置の導入を求める独仏と距離を置く内容となっているもようだ。

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競争力協定はユーロ圏の財政規律・財政再建の強化による信用不安問題解消や競争力強化を目的に、各国の関連政策を調整するもの。ドイツとフランスは2月初旬に開かれたEU臨時首脳会議で、ユーロ圏の包括的な信用不安対策として総額4,400億ユーロの「欧州金融安定基金(EFSF)」を拡充する案を容認する見返りとして、同協定の受け入れを迫った。両国は年金受給開始年齢の引き上げ、物価上昇率に連動した賃上げ制度の廃止、法人税の最低税率導入などを盛り込むよう求めている。

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ファンロンパイ大統領と欧州委員会が共同でまとめた草案は、28日に開かれたユーロ圏各国の高官級協議で提示された。AFP通信によると、同草案は独仏が提唱する具体案の趣旨には賛同を示しながらも、大きな論争の的となっている項目の大部分で独仏案には直接触れていない。たとえば、年金受給開始年齢の引き上げについては、持続可能な年金制度を維持できるかどうかを検証する際の基準を設けるとしながらも、年齢引き上げに関する文言は見当たらない。また、賃上げ問題に関しても、各国が急激な賃上げを招かないよう監視するといった曖昧な表現にとどまり、物価上昇率に連動した賃上げ制度の廃止には言及しなかった。

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独仏案をめぐっては、年金受給年齢引き上げ、物価上昇率に連動した賃上げ廃止などついて、国によって事情が違い、EUレベルで規制できるものではないとして中小国が反発していた。今回のEU案は、こうした国々に配慮した形となっている。

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同協定は3月11日のユーロ圏臨時首脳会議での協議を経て、同月24、25日に開かれるEU首脳会議で詳細を固める予定となっているが、独仏がEU案を骨抜きとして批判する可能性があり、曲折が予想される。

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