2011/3/14

総合 –EUウオッチャー

ユーロ圏が金融支援拡充策で合意、EFSFの国債引き受け可能に

この記事の要約

ユーロ圏17カ国は11、12日にブリュッセルで開いた特別首脳会議で、信用不安に陥った国に対する金融支援の拡充策で合意した。総額4,400億ユーロの「欧州金融安定基金(EFSF)」について、融資可能額を引き上げるほか、危機 […]

ユーロ圏17カ国は11、12日にブリュッセルで開いた特別首脳会議で、信用不安に陥った国に対する金融支援の拡充策で合意した。総額4,400億ユーロの「欧州金融安定基金(EFSF)」について、融資可能額を引き上げるほか、危機に直面する国の国債を買い取ることができるようにする。このほか、ユーロ圏各国の経済政策を協調する「ユーロ協定」についても原則合意した。これらに関しては24、25日のEU首脳会議で正式合意する見通しだ。

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ユーロ参加国の政府保証によるEFSFは、深刻な財政危機に陥ったユーロ参加国に緊急金融支援を行う総額7,500億ユーロの「ユーロ防衛基金」の中核。これまでに支援が発動されたのはアイルランドだけだが、ポルトガル、スペインなど財政不安を抱える国が支援を要請する事態に備えて、基金の拡充を求める声が強まっていた。

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EFSFは債券発行によって資金を調達する際に有利となるよう高格付けを保つため、2,000億ユーロを準備金として計上しており、実際に使える金額は2,500億ユーロにとどまっている。今回の首脳会議では、ドイツ、フランスなど信用力が高い国が融資保証を高めることで、上限一杯の4,400億ユーロを融資に使えるようにすることで合意した。

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さらに、EFSFの運用を弾力化し、ユーロ圏の国の国債を直接引き受けることができるようにする。ただし、国債引き受けの対象国には、EFSF融資を受ける場合と同様の厳しい条件が付けられ、財政再建計画の策定、実行が求められる。既発債を市場で買い取ることは認められない。

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このほか首脳会議では、EUと国際通貨基金(IMF)から総額1,100億ユーロの金融支援を受けているギリシャに対して返済条件を緩和し、金利を年1%引き下げ、4.2%程度とすることで合意。返済期間を3年から7年半に延長することも決めた。ギリシャが財政再建の一環として国営企業の民営化による500億ユーロの調達を約束したことを評価し、緩和要請に応じることにした。

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一方、EFSFから融資を受けているアイルランドも返済条件緩和を求めているが、これについては認めなかった。ドイツ、フランスが求めているユーロ圏で最低水準である法人税の引き上げに応じていないことが障害となった。アイルランド政府はこれを不服としており、月末のEU首脳会議までに何らかの対応をとる見込みだ。

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「ユーロ協定」、独仏案より緩やかな内容に

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今回の首脳会議で、もうひとつの焦点となったのが、ユーロ圏各国の経済政策を協調する「ユーロ協定(旧競争力協定)」。同協定はドイツとフランスが2月のEU臨時首脳会議で、ユーロ圏の包括的な信用不安対策としてEFSFを拡充する案を容認する見返りとして求めているものだ。各国が社会保障政策、税制、財政などで足並みをそろえることで不均衡を解消し、ユーロ圏の競争力を強化するのが狙いだ。独仏案を土台に、ファンロンパイ大統領と欧州委員会が共同で草案をまとめた。

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基本合意した協定案では、政策協調の柱として、競争力強化、雇用改善、財政健全化、財政安定の強化の4つを提示。これらについて各国が毎年、自国の事情を考慮しながら目標を設定し、その履行状況を首脳会議が監視する。自国以外にも影響が及びそうな改革の実施については、事前に他の国と協議することを求める。

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独仏は協定に、年金受給開始年齢の引き上げ、物価上昇率に連動した賃上げ制度の廃止、法人税の最低税率導入などを盛り込むよう求めている。これに対して他の国から、ドイツの基準を押し付けるもので受け入れられないとする批判の声が多かった。

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協定案では、これらの点について触れながらも、その実施については各国の判断に委ねる余地を与えている。独仏の要求が反映されたのは、EUが定めた財政規律の順守を各国の憲法や法律に盛り込むという点にとどまり、全体的に緩やかな内容となった。ドイツは同協定で要求がほとんど受け入れられなかったにもかかわらず、EFSF拡充に合意したことで、大幅に譲歩した格好となる。

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