2011/3/7

産業・貿易

男女別保険料に違法判決、12年末から「同一料金」適用へ=欧州裁

この記事の要約

欧州司法裁判所は1日、保険業界で一般化している男女別の保険料設定はEU法が禁止する差別に当たり、男女平等の原則に反するとの判決を言い渡した。域内の保険会社は2012年12月21日以降、すべての契約者に同一料金を適用するこ […]

欧州司法裁判所は1日、保険業界で一般化している男女別の保険料設定はEU法が禁止する差別に当たり、男女平等の原則に反するとの判決を言い渡した。域内の保険会社は2012年12月21日以降、すべての契約者に同一料金を適用することが義務付けられる。

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EUは性別、人種、民族、宗教・信条、障害、年齢および性的志向によるあらゆる差別を禁止する欧州共同体(EC)条約第13条に基づき、2007年に原則としてすべてのモノとサービスの領域で性別による差別的扱いの禁止を定めた「男女平等待遇指令」を採択したが、保険分野は適用が除外されている。一般に、自動車保険では男性に比べて事故を起こす確率が低い女性の保険料が安く、年金保険では平均寿命が短い男性への支給額が高く設定されている。

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欧州委員会は男女差を理由とするこうした扱いは不当な差別に当たるとして、2003年に保険料の男女統一を保険会社に義務づける条項を盛り込んだ法案を打ち出したが、業界側は男女間の料率格差は客観的なデータに基づいて割り出される合理的なものであり、性別によるリスク査定が認められなくなれば、全体として保険料を引き上げざるを得ないと反発。英仏独など主要国がこうした主張を擁護した結果、保険料の性別格差を撤廃する条項が法案から削除された経緯がある。

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今回の事案は性差に基づく保険料の設定は違法だとして、ベルギーの消費者団体「テスト・アシャット(Test-Achats)」が提訴していた。裁判所は判決で「性別をリスク要因として保険料の算定に組み入れることは差別にあたる」と指摘。保険会社に対し、性差に基づく現行の料率設定を見直し、男女同一料金とするよう命じた。

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テスト・アシャットは「歴史的な判決で、すべてのEU市民にとって大きな勝利」と歓迎。欧州委のレディング副委員長(司法・基本的権利・市民権担当)も「完全な男女平等の実現に向けた重要な一歩」と指摘し、近く保険会社の代表を集めて具体策を協議する意向を示した。

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一方、保険業界は今回の判決に強く反発している。欧州保険委員会(CEA)は声明で、「判決に深く失望している。保険料や保険商品に深刻な影響が及ぶことは確実で、保険加入者にとって悪いニュースだ」とコメント。また、英保険協会(ABI)は男女統一料金とした場合、全体として女性の保険料は大幅に上昇し、男性への年金支給額は低く抑えられることになると警告。自動車保険では25歳以下の女性の保険料が最大25%引き上げられるのをはじめ、生命保険では女性の保険料が最大20%引き上げられるのに対し、男性の保険料は逆に最大10%引き下げられるとの試算を明らかにした。

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