2011/3/14

産業・貿易

CDSなどの空売り規制強化、欧州議会の委員会が採択

この記事の要約

欧州議会の金融経済委員会は7日、株式や国債の空売りなど投機性が高い取引の規制案を採択した。国家や企業の信用リスクを売買するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)も含めて、空売りを厳しく制限することなどが柱。2012年 […]

欧州議会の金融経済委員会は7日、株式や国債の空売りなど投機性が高い取引の規制案を採択した。国家や企業の信用リスクを売買するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)も含めて、空売りを厳しく制限することなどが柱。2012年から実施する。法案は欧州議会本会議および加盟国による承認が必要となる。

\

同規制案は金融危機の再発防止策の一環として、欧州委員会が昨年9月に提案したもの。ドイツが同年5月、ギリシャに端を発したユーロ圏の信用不安は国債などの投機的な取引が元凶として、国内で取引されるユーロ圏の国債やCDS、国内の一部株式の空売り禁止措置を一方的に導入し、ユーロ圏内の市場に大きな動揺を与えたことから、欧州委がEU共通の規制導入に着手することになった。

\

規制案ではCDSを含む現物手当てのない空売りを厳しく制限するほか、売り持ち(ショートポジション)が一定の規模に達した投資家に対して、当局や市場に報告することを義務付ける。異常な値動きを示すなど緊急事態が生じた際は、欧州証券監督機構(ESMA)に各国と協議の上で空売りを一時的に停止する権限を与えられる。

\

欧州議会の金融経済委員会が採択した空売り規制は、欧州委の原案より厳しい内容。投資家に現物手当てが可能であることの証明を義務付ける原案に対して、空売りを行った日のうちに現物を確保することを求め、違反した場合は制裁金を徴収する。CDSに関しては、取引対象となる国債の値動きと密接に連動する株式(大企業の株式など)を保有している場合も現物手当てとみなすが、事実上の空売り禁止に近い措置と受け止められている。

\

同案をめぐっては、CDSに対する厳しい規制で債券市場の流動性が損なわれ、逆効果になるとしてヘッジファンドなどが批判している。金融経済委員会の修正案では、こうした反発に配慮し、原案では空売りを行うごとに求められていた報告義務について、同一営業日内の複数取引は当日内に一括して報告すればいいとする方向に緩和したものの、全体的には大幅な規制強化に変わりはない。

\

加盟国の間でも、規制強化に積極的なドイツやフランスが空売りの全面禁止を求めている一方で、欧州の金融センターであるシティを抱える英国は規制強化に慎重で、意見は分かれている。このため同法案をめぐる加盟国の協議が紛糾する可能性がある。

\