2011/4/4

総合 –EUウオッチャー

アイルランドが銀行に240億ユーロ追加注入、ストレステストの結果受け

この記事の要約

アイルランド中央銀行は3月31日、国内主要4銀行を対象として独自に実施したストレステスト(健全性審査)の結果、4行に追加で総額240億ユーロの資本注入が必要になったと発表した。アイルランドは金融危機で大きな打撃を受けた金 […]

アイルランド中央銀行は3月31日、国内主要4銀行を対象として独自に実施したストレステスト(健全性審査)の結果、4行に追加で総額240億ユーロの資本注入が必要になったと発表した。アイルランドは金融危機で大きな打撃を受けた金融業界に、2009年以降に総額460億ユーロの公的資金を注入済み。追加支援により注入額は700億ユーロに達することになる。

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ストレステストの対象となったのは、バンク・オブ・アイルランド、アライド・アイリッシュ・バンク、エデュケーショナル・ビルディング・ソサイエティー(EBS)、アイリッシュ・ライフ・アンド・パーマネント(ILP)。うちアライド・アイリッシュとEBSは、リーマンショックに伴う金融危機を受けて、すでに国有化されている。

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中銀が必要とした追加注入額は、アライド・アイリッシュ133億ユーロ、バンク・オブ・アイルランド52億ユーロ、ILP40億ユーロ、EBS15億ユーロ。アイルランドはギリシャ財政危機に端を発した信用不安が波及した昨年11月にEU、国際通貨基金(IMF)が支援として決めた総額675億ユーロの緊急融資のうち、350億ユーロを銀行再建に充てることになっている。政府は同資金を活用して追加注入を行う方針だ。

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今回のストレステストは、EUの欧州銀行監督機構(EBA)が各国の銀行に実施するテストとは別。アイルランドはEUとIMFに緊急融資を仰いだ際に、条件として定期的に国内銀行の健全性調査を行うことを求められていた。これに基づいて実施されたテストでは、アイルランドでは不動産価格の低下が続き、銀行は不動産関連の貸倒引当金がさらに膨らむと予想。こうした危機を乗り切るには、現在の資本力は不足として、追加注入を指示した。現在は180%以上に膨れ上がっている貸出・預金比率(貸出残高の預金残高に対する比率)を2013年までに122.5%まで圧縮する必要があるとしている。

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アイルランド政府は銀行への追加資本注入に伴い、新たな金融再編を進める方針で、アライド・アイリッシュとEBSを合併させる予定。また、ILPの過半数株式を取得し、国有化する。さらにILPは主要部門である年金事業の売却を求められ、事業が大幅に縮小される。ヌーナン財務相は、将来の国内銀行業界はEBSとILPの合併で誕生する新銀行と、唯一国有化を逃れているバンク・オブ・アイルランドの「二本柱体制」になるとの見通しを示した。

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EU、IMF、欧州中央銀行(ECB)は同日、共同声明を発表し、アイルランド中銀の決定について「銀行システムの健全性を保つための大きな一歩だ」と歓迎の意を表した。

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一方、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は1日、アイルランドの長期国債の格付けを「シングルAマイナス」から1段階引き下げ、「トリプルBプラス」とした。財政危機に陥ったユーロ参加国に対する緊急金融支援の常設的な枠組みとなる「欧州安定メカニズム(ESM)」で、支援対象国となった国債の保有者にも一定の負担を迫ることが決まったことを受けたもの。ただ、ストレステストの結果と追加資本注入については評価し、格下げの規模は予想より緩やかなものとなった。格付け見通しについても「安定的」とした。

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