2011/4/11

総合 –EUウオッチャー

ポルトガルもEUに金融支援要請、ユーロ圏で3カ国目

この記事の要約

財政危機に陥っているポルトガル政府は6日、EUによる緊急金融支援を欧州委員会に要請した。財政再建が議会の否決で行き詰まったことで国債発行による資金調達が困難になり、支援要請を迫られた。これを受けてEUは8日に開いた財務相 […]

財政危機に陥っているポルトガル政府は6日、EUによる緊急金融支援を欧州委員会に要請した。財政再建が議会の否決で行き詰まったことで国債発行による資金調達が困難になり、支援要請を迫られた。これを受けてEUは8日に開いた財務相会合で、同国が厳しい財政再建策を実行することを条件に、国際通貨基金(IMF)と共同で緊急融資を実施することで合意した。欧州委のレーン委員(経済通貨問題担当)によると、支援規模は800億ユーロに上る見通し。ユーロ圏で財政危機に伴いEUに支援を要請するのはギリシャ、アイルランドに続き3カ国目となる。

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財政赤字がEUの財政規律で上限となっている国内総生産(GDP)比3%を大幅に超えているポルトガルは、2012年までに赤字を上限内に抑える必要があり、政府は厳しい緊縮策を進めてきた。それでも信用不安が収まらないことから、政府は3月11日に追加の赤字削減策を議会に提出。しかし、野党が過半数を占める議会が否決し、ソクラテス首相は23日に辞意を表明。6月5日に実施される総選挙を経て新政権が発足するまで政治空白が続き、財政再建が宙に浮くことになった。

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これを受けてポルトガルの信用不安が増大し、10年物国債の利回りは9%目前まで上昇。同国は4月から6月にかけて100億ユーロに近い国債の償還を控えているが、適正水準での資金調達が絶望的となったことから、EUへの支援要請に踏み切った。ソクラテス首相はテレビ演説で「全力を尽くしたが、この決定以外に国を危機から救う手立てがない状況に追い込まれた」と語った。

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EUは深刻な財政危機に陥ったユーロ参加国にIMFと共同で緊急融資を行う総額7,500億ユーロの「ユーロ防衛基金」を活用し、ポルトガルを支援する。その条件として◇一層の歳出削減を柱とする新たな財政再建策◇国営企業民営化などの構造改革◇金融市場の安定化策――をまとめ、実行することを求める。これについてはEUの欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、IMFとポルトガルの与野党が協議して5月中旬までに具体策をまとめ、総選挙で誕生する新政権による実行を義務づける。融資は5月中にも実施される見通しだ。

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財務相会合後に発表された共同声明では、財政再建策などはポルトガル政府が3月11日に発表した措置が「スターティング・ポイント」になるとしており、議会が否決した追加緊縮策より厳しい措置の実施を求められるのは確実だ。与野党双方とも総選挙を前に、一層の緊縮でしわ寄せが及ぶ国民の声を無視するのは難しく、EU 、IMFなどとの協議は難航が予想される。

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