2011/5/2

環境・通信・その他

域内排出量取引、4カ月ぶり全面再開

この記事の要約

欧州委員会は4月26日、サイバー攻撃を受けて今年1月19日から一部停止していたEU排出量取引(EU-ETS)を、5月4日午前から全面的に再開すると発表した。参加する30カ国すべてにおいて、約4カ月ぶりにシステムが再稼働す […]

欧州委員会は4月26日、サイバー攻撃を受けて今年1月19日から一部停止していたEU排出量取引(EU-ETS)を、5月4日午前から全面的に再開すると発表した。参加する30カ国すべてにおいて、約4カ月ぶりにシステムが再稼働する。

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排出権取引の一部停止は、域内5カ国の排出権登録システムにハッカーが侵入、排出枠を盗みスポット市場で売却していたことが判明したことから実施された。このときの被害総額は3,000万ユーロ相当とみられている。その後、システムの安全性が確認できたとして、2月4日から英、仏、独、オランダ、スロバキアで取引が再開されていた。ただし、取引量は1月以前の6割程度に落ち込んでいる。

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EUのヘデゴー委員(気候変動担当)は、欧州委は加盟国と協力してシステムの改善を図ってきたと述べ、全加盟国の排出権登録所で安全強化策が実施されたと説明。しかし、市場参加者の間からは早くも、「いまだ大きな問題が残されている」と指摘する声が上がっている。国際排出量取引協会(IETA)のダーウェント会長は、「私たちの考えでは、いまだふさがれていない数多くの穴があり、深刻な状態だ。市場が適正な水準で機能しているとは言えない」と発言。欧州委がオンラインでの排出量取引を再開するために各国が満たすべき基準について十分な透明性を示していないほか、盗難にあった排出権の追跡調査もまだ終了しておらず、関係者らの間には懸念が残っているという。

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EU-ETSは、温暖化ガスの排出量を取り引きするシステムとしては世界最大の規模となっており、国や企業が排出量に一定の枠を設け、実際の排出量と枠の上限の過不足分を売買する仕組み。全体的な排出量の抑制を目的としている。

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