2011/5/23

産業・貿易

対エアバス低利融資は違法、「A380」開発支援ではEUを支持=WTO

この記事の要約

欧州航空機大手エアバスに対するEUの資金支援が違法な補助金にあたるとして、米政府が世界貿易機関(WTO)に訴えていた問題で、WTO上級委員会は18日、EU側の協定違反を認定した紛争処理小委員会(パネル)の裁定を大筋で支持 […]

欧州航空機大手エアバスに対するEUの資金支援が違法な補助金にあたるとして、米政府が世界貿易機関(WTO)に訴えていた問題で、WTO上級委員会は18日、EU側の協定違反を認定した紛争処理小委員会(パネル)の裁定を大筋で支持する判断を下した。上級委はエアバスが新型航空機の開発資金として英国、フランス、ドイツ、スペイン政府から低利融資の形で不公正な補助金を受け取り、最大のライバルである米大手航空機メーカーのボーイングに深刻な打撃を与えたと認定。EUに対し、6カ月以内に是正措置を講じるよう勧告している。

\

一方、上級委はエアバスが超大型旅客機「A380」の開発資金として英、独、スペイン政府から受けた「ローンチエイド」と呼ばれる融資について、WTO協定で禁止された輸出補助金に当たるとの米側の主張を認めたパネルの判断は「誤り」と指摘。さらに、研究・開発(R&D)を目的とした支援はすべて合法との見解を示し、この点でもパネル裁定を覆した。

\

玉虫色ともいえる上級委の最終報告を受け、米国とEUは共に勝利宣言を行っている。米通商代表部(USTR)のカーク代表は「(WTOの)メッセージは明確だ。ローンチエイドは違法な補助金であり、EUと加盟国は今後、こうした資金支援を差し控えなければならない」との声明を発表。これに対し、欧州委員会のデフフト委員(通商担当)は「上級委の最終報告に満足している。A380向けのローンチエイドが違法な輸出補助金にあたるとの米側の主張は完全に退けられた」と述べた。さらに、エアバスのエンダース最高経営責任者(CEO)は「上級委の裁定は欧州にとって大きな勝利だ」と強調。次期中型旅客機「A350」など、今後市場に投入する新機種に関しても、引き続き「官民パートナーシップ」の枠組みを活用することができるとの見解を改めて示した。

\

上級委の裁定は航空機市場でのシェア拡大や新規参入を目指すロシア、中国、ブラジル、カナダ、日本などの補助金政策にも影響を与えそうだ。ただ、EUは米政府によるボーイングの次世代中型旅客機「787」(ドリームライナー)の開発支援がWTO協定に違反するとして提訴しており、WTOパネルはことし3月にEUの主張を大筋で認める最終報告をまとめ、現在、上級委で審理が行われている。上級委が今回示した判断はWTOの紛争処理プロセスにおける最終審にあたるが、市場では2004年から続く航空機メーカーへの補助金をめぐる欧米間の通商紛争が最終的に決着するのは「数年先」との見方が有力だ。

\