2011/5/23

産業・貿易

法人税の課税標準統一構想、英などが欧州委に反対の意見書

この記事の要約

EU域内で法人税の課税標準を統一する計画をめぐり、アイルランドや英国など7、8カ国が18日までに、「共通連結法人税課税標準(CCCTB)」と呼ばれるシステムの導入に反対する意見書を欧州委員会に提出したもようだ。英フィナン […]

EU域内で法人税の課税標準を統一する計画をめぐり、アイルランドや英国など7、8カ国が18日までに、「共通連結法人税課税標準(CCCTB)」と呼ばれるシステムの導入に反対する意見書を欧州委員会に提出したもようだ。英フィナンシャル・タイムズ(FT)がEU当局者の話として報じた。欧州委は税制分野における主権の維持を主張する英国などに配慮して、課税標準を統一しても税率は加盟国が独自に設定できる仕組みを提案しているが、法人税制改正は各国の利益にかかわる微妙な問題だけに、EU内では法案成立に向けた調整には「数年を要する」との見方が出ている。

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CCCTB導入に関する法案は、欧州委が今年3月に域内市場統合の一環として打ち出したもの。域内の複数国で事業展開する企業は現在、それぞれ拠点ごとに申告を行い、法人税を支払っているが、新システムではまず、各拠点の損益を通算したEU全体の連結損益ベースで税額が算出される。次に売上高、資産、従業員数などに基づいて定められた公式に従って、拠点を置く各国に連結損益が再配分され、各国の税率で法人税が支払われる仕組みだ。欧州委は課税標準を統一することで二重課税の回避や、ある国で生じた利益と他の国で生じた損失の相殺といった調整がしやすくなり、税務処理に伴う負担を大幅に軽減することができると説明している。

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課税標準の共通化に当初から反対を表明しているのはアイルランドと英国。アイルランドは法人税率を域内最低水準の12.5%に設定し、多くの多国籍企業を誘致してきたが、税率が高く、競争力などの面で不利な立場にあるドイツやフランスなどは同国に税率の引き上げを求めている。一方、英国は税制分野で加盟国の主権が制限されることに強く反発しており、下院は今月半ば、CCCTBの導入に反対する決議案を採択している。

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FT紙によると、アイルランドと英国以外にオランダ、ポーランド、ブルガリア、スウェーデン、マルタが欧州委に課税標準の統一に反対を表明。一方、イタリアを含む少なくとも2カ国からはCCCTBを支持する意見書が提出されたという。欧州委はCCCTBを採用するかどうかは各企業の判断に委ねるとしているが、税制改正には加盟国の全会一致による承認が必要となるため、各国の意見調整は難航必至だ。

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