2011/6/13

総合 –EUウオッチャー

欧州委が経済・財政政策の国別勧告提示、「経済統治」強化の一環で

この記事の要約

欧州委員会は7日、EU加盟国が今後12~18カ月以内に実施すべき経済・財政政策をまとめた国別およびユーロ圏向けの勧告を発表した。これはギリシャ危機の再発を防止して安定成長を実現するため、欧州委が加盟国の経済・財政政策を監 […]

欧州委員会は7日、EU加盟国が今後12~18カ月以内に実施すべき経済・財政政策をまとめた国別およびユーロ圏向けの勧告を発表した。これはギリシャ危機の再発を防止して安定成長を実現するため、欧州委が加盟国の経済・財政政策を監督して政策協調を深める「経済統治」強化の一環で、各国政府が提出した経済・財政改革プログラムを受けたもの。今月23-24日の財務相理事会とEU首脳会議で勧告が承認される見通し。加盟国は2012年の予算編成に勧告を反映させることが求められる。

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EUは今年1月から「ヨーロピアン・セメスター」と呼ぶ政策監視の年間スケジュールに基づき、予算編成などに際して早い段階から加盟国が政策協調を行う仕組みを導入した。1月には第1段階として、EUが今後1年間に取り組むべき優先課題をまとめた「年次成長調査」を発表。財政再建、雇用政策、成長促進策の3分野に焦点を当てた10項目の行動計画を掲げ、加盟国に財政健全化や労働市場改革への取り組みを強化するよう求めた。加盟国は年次成長調査の提言を踏まえて経済・財政改革プログラムを策定し、5月までに欧州委に提出。欧州委はこれを基に国別およびユーロ圏向けの勧告をまとめた。

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欧州委は各国政府が提示したプログラムについて、マクロ経済の見通しは全体として「現実的」で、年次成長調査で掲げた優先課題も「かなりの部分が反映されている」と評価。そのうえで、個々のプログラムは「野心に欠ける」ものが多く、目標達成に向けた具体策は「あいまいで焦点が定まっていない」と指摘している。

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EUや国際通貨基金(IMF)から支援を受けたギリシャ、アイルランド、ポルトガル、ラトビア、ルーマニアに対しては、融資条件となっている財政再建策を確実に実行するよう要求。スペインについては予想を上回る失業率の低下により、国内総生産(GDP)と財政赤字削減のいずれも目標達成は困難と分析。状況に応じて一段の歳出削減や増税などの「追加的措置」を講じる必要があると指摘している。

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一方、ドイツ、イタリア、ベルギーに対しては経済計画の具体的な内容が「極めてあいまい」と批判。イタリアについては12年以降に財政危機に陥る可能性を指摘し、政府が打ち出した雇用促進策の実行可能性を疑問視している。ドイツに対しては州立銀行の再編を着実に進めて「金融セクターの構造的な問題」を克服するよう求めている。さらにハンガリーの財政再建計画は税収が予想を下回るといった「複数のリスク要因」に左右される可能性が高く、14年まで一段の緊縮財政措置が必要と指摘。そのうえで年金基金の再国有化などを提案している。

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