2011/8/1

総合 –EUウオッチャー

次期中期予算めぐる協議、原案「たたき台」に開始で合意

この記事の要約

EU加盟国は7月29日、EUの次期中期予算(対象期間:2014~20年)について、欧州委員会がまとめた原案をたたき台として協議を進めることを賛成多数で承認した。ただ、同原案は加盟国が緊縮財政を迫られる中で予算を5%増額す […]

EU加盟国は7月29日、EUの次期中期予算(対象期間:2014~20年)について、欧州委員会がまとめた原案をたたき台として協議を進めることを賛成多数で承認した。ただ、同原案は加盟国が緊縮財政を迫られる中で予算を5%増額するなど批判を浴びており、成立までの道のりは険しそうだ。

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欧州委が6月末に発表した原案の予算総額は、現行中期予算(2007~13年)を5%上回る1兆250億ユーロ。最大の歳出項目である農業予算を据え置き、行政コストを圧縮する一方で、将来の成長の土台となるエネルギー、通信、道路などのインフラ整備に予算を多く配分した。

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また、予算増加による加盟国の負担増大を避けるため、EU共通の金融取引税、付加価値税(VAT)の導入による独自財源強化も盛り込んだ。この新税導入によりEUは年間最大300億ユーロの財源を確保でき、独自財源が予算に占める割合が現在の2倍の40%まで増加し、加盟国の分担金が3分の1に縮小する。

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これに対して英国、ドイツ、フランスなどは、財政が厳しい状況にある中、EUも緊縮を進める加盟国と歩調を合わせるべきだとして反発。金融取引税についても、英国を中心とする一部の国が反対を表明している。

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各国の担当相による非公式会合では、英国、スウェーデン、ハンガリーを除く24カ国が原案を土台に協議を開始することに合意したが、今後の修正は確実。欧州委のレヴァンドフスキ委員(予算担当)は「最初の大きなハードルを乗り越えた」としているが、本格化する協議では激しい意見の対立が予想され、調整の難航は必至だ。

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欧州委はEU税の導入に向けた法制化作業に着手し、EU首脳会議が開かれる10月をめどに時期中期予算の詳細を固める予定だ。

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